心だけ、逃避行」
「ここに一本のカレースプーンがあります」
「その心は、」
「もう一つ、人徳でツテから用意してもらったサンドペーパーがあります。」
「人徳ないと支払えないの?」
「あれば仁徳の墓でも構わないですよ」
「ちょっと手に余るかな」
「じゃあ置き場のいらない手頃なエピソードの積み重ねで得た人徳で」
「余りある懐の深さが要りそうですね」
「そこは努力かな」
「結局そこなんだ」
「御時世をなんだと思ってるんですか民衆は米すら買えずに喘いで34度の熱に赤らむ顔をスマホで扇ぎながらTwitterする時代ですよ!」
「団扇でいいんじゃないですか」
「金と米が底を尽き出したら団扇のツイートで噂話を分け合うより他娯楽がないんです」
「米がなくても娯楽なんだ」
「人間これ遊びが一生、そして最後に用意するのが美人のポスター」
「あ、なんか既視感…」
「あとはこの、カレースプーンを貴方に渡しますから、誰にも見つからずにひたすら排水管まで穴を掘り続けて下さい。」
「うんこ塗れになるヤツでしょう?それはちょっとしんどいかなって、」
「私は先に次元の裂け目を跨いでホテルでゆっくり動画観てますんで、無事出たら海の見える向こう側までやって来てください。」
「待って役割が、」
「しんどい役だけあなたに任せます、頑張ってね強い子シンドバッド」
(変換間違いで生まれた死んだバターが周囲を黄色い液体で満たす頃、エメラルドとスカイブルーをオリーブ油で割ったようなチャプチャプとした海が記憶の層で揺らめきます。女優のポスターは肩幅の狭い桃井かおりがシャフ度で気怠げに『見ているだけ』)
7/11/2025, 2:13:51 PM