ただひたすらに走らせていた
そのペン先がふと止まった
書き続けなければいけないのだ
早く、早くこの物語の結末を書き切って
終わらせてしまいたいのだ
僕の手を、僕自身の事も
楽しかった事も嫌だった事も
同じだけあった
希望も失望も両手から溢れるほど
抱いてきた
だからなんなのだろうか
得たものと失ったもの
どちらが多いかとか
涙の数と嘘の数を
足したり引いたり
愛と金はどちらが重いか
壊れた天秤とにらめっこして
面倒くさくなって
何度もペンをへし折って
酸いも甘いも味わって
どんな後味でも僕には無意味で
物語の結末も決められないまま
巡る四季の色を眺めて
その中で僕は
ただ、ただ過ぎた日を想うのだ
喪ったもの、失ったもの
その重さも数も
その時に感じた想いも痛みも
いつまで経っても消えなくて
見えないくせにいつまでも
古傷のように疼いて痛んで
いきなり襲いくるもんだから
息苦しくて、どこか淋しくて虚しくて
もう慣れたはずなのに、
その夜は眠れずに
震えた指で唇で煙草を咥えた
吐いた煙が淀んで
僕自身を隠すように包むから
なんだか泣きたくなる
喪失感が心に穴を開けるだけなら
どうしてこんなに痛むのだろうか
喪う事も失う事も避けられないんだったら
何度やり過ごせば楽になれる?
別に
世界に一つだけじゃなくて良かった
誰かと同じで良かった
個性、多様性、そんなの無しに
毎日同じ時間に起きて
同じ服、同じものを食べて
同じ歩幅で歩いて
同じ事をして
同じ時間に寝て
繰り返し、繰り返し、繰り返し、
そして
適当な年齢で死ねたなら
僕は別にそれで良かった
みんな違っていいんだ、って
今の僕には思えなくて
出る杭は必ず打たれる
みんな違うから
そこに憎しみも妬みも生まれる
いっそ心が無かったら
争いもきっと生まれやしなかった
世界に一つだけだと言われるから
だから誰も自分以外を理解できないの
だから僕は誰かと同じ人生で
別に良かったんだ
あわよくば君みたいな人生が
良かったんだ
そしたらあの日
あの場所から一緒に飛んで逝けたのに
自分に無いものが他人にあって
それってすごいなぁ、
ってなんでそれで終わらないんだろう
陰口、妬み、憎悪に
足を引っ張り、法螺を吹いて、
そんな奴等ばかりだ
‥あぁ、吐き気がする
地位の為に見て見ぬふりする
お偉いさんもまた然り
死にたくなるのも分かるよ
それもいいと思う
逃げたくなるのも分かるよ
それでいいと思う
でもそれが出来ずに
歯を食い縛って生きる
拳に爪が食い込んで
見えない血を流してる人もいる
失いたくないものがあるから
守りたい何かがあるから
辛いよな、苦しいよな、
何もかも分かったような面されてさ
あぁでもない、こうでもない、
バカにされてさ
明日、もし晴れたら
いや、明日もし晴れても
何も変わりやしないから
世界が終わってしまえばいい、と
そう思う僕もまた
ひどい人間なのかな
なんで私だけこんな目に、
なんで私だけがこんな思いを、
なんで私だけ、私だけ、
そんな風に言う人が大嫌いだった
自分は何様なのだろう、
問うてみたくて仕方がなかった
そんな風に思う僕こそ
何様なのだろう、
今ならそう思うよ
自分をちゃんと大事にしてるから
出る言葉なんだと
今なら分かるよ
だって僕は何年も
そんな言葉口に出した事がない
やりたい事もなく何かを守る事もなく
プライドも自虐もなく
何より自分自身に興味がない
そんな僕よりは全然好かれると思うよ
だから良いと思うよ
私だけ、私だけ、
それで良いと思うよ