流れてくる優越感に身をゆだねた
倍になって押し寄せてくる劣等感を遠目に見て
打ちのめされる事は分かっているのに
もう何度目だろう
結局それでしか保てないのだ、僕は
手を差し伸べて欲しいのだ、ほんとは
何も考えず 特別幸せでも不幸でもなく
ただ普通に生きて 普通に死にたい
それだけなのにな
まったく
めんどくさいよなぁ 人間て
たった一件のLINEを
今も待っている
別に女々しくとかそんなじゃないよ
僕は元気でやってるよ
さすがにあの時は参ったけど
心の傷を抉り
君に見せつけてやりたいくらいだったよ
でも時がほんとに解決してくれたもんだから
ただただ歳を取ってくのも悪くないね
一言聞いてみたい事があるんだよ
「本当はあの時君はさ…」
その答えがどうだったとしても
ただ最後に一言
君に言いたい事があるんだよ
懐かしい夢を、見た気がする
その頃はまだ自分は欲張りで
頑張ればなんだって出来るんだって
そう思っていたっけ
大人が嫌いなくせにいい子のふりして
心の中ではよく馬鹿にしてた
そんな大人達によって作られた
変わらない毎日の中で
自由が無い事をいつも嘆いていたけれど
ただそれってさ
はみ出さないように
僕らは守られていたんだなって
今なら分かるよ
自由なんて切符を持った瞬間
社会に揉まれて 線からはみ出て
下手すりゃ轢かれる
朝、目が覚めたら泣いていたのは
あの頃なりたくない大人に
自分はなってしまったから
どうしても、どうしても戻りたいと
叶わない欲で枕が滲んでも
それでも今の自分に
どこかまだ期待してしまっているから
街の明かりに誘われて羽虫が一匹飛んでいた
闇と光の間をゆらゆらと
彷徨っているのか強がってるのか
それでも器用に飛んでいた
ここは自由な世界だよ
行きたい所で生きていいのだと
教えられた記憶がある
そんな世界で
誰かは自分の正義の為だけに銃口を向け
誰かは涙を流し花を手向け
誰かはアレのせいだと怒りをぶちまけ
誰かは何も出来ずたらればで嘆き
誰かは見えない所で薄ら笑い
誰かは変わらず日常に身を置く
さて 僕はどれだろうか
それとも どれでもないのだろうか
街の明かりが消えて 空が静かに目を覚ます頃
結局僕は分からないまま
空はいつもと変わらないまま
今日もまた一日が始まる
七夕飾りになれなかった笹が
カサカサ乾いた音で揺れていた
どんよりと曇った日暮れ時
どうやら今年もあの二人は会えないらしい
それでも変わらず
お互いを愛し、待ち続けるんだろう
そんな事思う僕の側を
知らない二人が通り過ぎた
手を繋いだ後ろ姿 楽しそうな声
君と僕には無理だったね
君の耳飾りは短冊のように揺れていて
流れた涙は天の川のように綺麗で
でも見ないふりした
ずっと愛せる程僕は強くなかったし
待ち続けられる程君は僕を愛せなかった
お互い様だよ
憂いているのはあの笹と僕くらいで
後ろ姿を見送りながら
ただ僕は色も無い空にあの日を映した
一瞬だけ二つの星が見えた気がした