朦朧と熱にうかされて
いつもは意識してみることのない天井を
いつもなら聞かないアナウンサーの声を聞きながら見てる
この時間帯のテレビはこういう時にしか目にしないから、なんか、休んでるな〜って感じ
台所や脱衣所で朝の家事をしている音が聞こえる
それがひときわ非日常の空間にいることを感じさせた
やることもなく、眠ろうとしても薬の味や水の味が胸から消えないばっかりに気持ち悪くて寝付くこともできない
なんか食べる?と聞かれ
わたしは「桃缶」と答えた
りんごジュースと桃缶 それと
布団をトントンしてくれる手が
風邪っぴきの定番
◇風邪◇
真っ暗な空から 音もなく
大粒の牡丹雪が 見渡すかぎり一面に
地面へと降り注いでくる
さながら 地球侵略に来た
たくさんの侵略者のよう
一定のスピードで 待ったなしで
重力ってやつで降りてくる
しんしんと降り注いでくる世界には
音がない
まるで ひとりぼっちのよう
自分の世界に浸っていると
いつの間にか あなたが雪をはらってくれる
帽子をかぶっていないわたしの頭は
はらわれる度 細かく砕けた雪が
髪の間に隠れて 体温でとけて髪を濡らしていく
もう家に入ろう、と あなたから促されて
名残惜しくも その場所を後にする
また あんな風に 雪が降ってきたら あなた
時を越えて 今のわたしの頭に積もった雪を
はらいにきてくれる?
◇雪を待つ◇
ねぇ 気づいてる?
こういうときって、手を繋ぐんだよ
すれ違うカップルは みんなそうしてる
こんな寒い日は 可愛い彼女の冷えた手を
自分のコートに引っ張り込んで
温めるのがセオリーなんだよ
ねぇ、わたしもう息切れ甚だしいよ
こんな坂道はね、かよわい彼女の手を引いて
坂道をフォローするもんなんだよ
なんで、そんな、
涼しい顔してさ、ねぇ、聞いてる?
だから、なんで そんな自分だけ、
サクサク進んで、いっちゃうの‥はぁ
笑ってないで、手を 引きなさいよ
えっ そりゃ 冷たいでしょうが
ケチ! ケチ! あっためろよー!あほー!
周りを、みならいなさいよ!
なんで、わたしばっかり、喋ってんの、よ!
あほー!!!!!!
(紅葉散策にて。)
◇手を繋いで◇
意識を手放せば
奔放な世界へと迷い込む
時にシリアス 時に愛おしく
支離滅裂もいいところ
あなたが 空飛ぶバスの中で
そのままでいい とさようならを言った
わたしは泣きながら 目を覚ましたんだ
大きな鍔の帽子の女性に
何故かな ロックオンされて
彼女の作った世界で得体の知れない人型が
うろうろ歩き回る室内で 怯えて暗闇に隠れ
理解が追いつかないまま 彼女に
そろそろね どうしてだと思う?
なんて囁かれて
はてなのまま起き上がる
こっちじゃ説明のつかないことばかり
思い通りになんかいかないし
どんなに想ったって
肝心のあなたは出てきてくれないの
こっちでも会えないのに、だよ
◇夢と現実◇
急速に 落下するように
あなたの奏でる音に溺れていく
その声 もっと聴きたい
その低音 最高だわ
何度も何度もリピートして
ヘッドフォンで あなたを摂取する
それは満たされることなく
依存性は尚更高まる
新譜なんていらない
お気に入りの曲にだけ とことん
◇落ちていく◇