消えてしまいたくなる夜がある。
誰か耳を塞いで、目を隠して、私を抱きしめて。
1人になるのが辛くて、でも誰か居るのも苦しい。
生きるのに向いていない。
誰にも頼れないから、幸せな記憶に思いを馳せる。
1人で血と涙に塗れながら、やがて来たる夜明けを待つ。
周りの見えない夜に溺れて、朝日を探す。
不安を砕く白い塊を冷たい水と共に飲み下す。
融けるように夜中の冷たさに沈む。
そしてきっと今日も、
目覚めるころには静かな夜明けが待っている。
私は無様にも恋をしてしまった。
きっと優しいあなただから、
こんな私にも優しさを分け与えてくれるのだろう。
でも、好きな人が居るって聞いた。
ねぇ、叶わないなら優しくしないで。
ただ苦しいだけなの。
夜中にぱちりと目がさめる。
言葉にできない空気感が頭を支配する。
違う人間になったみたいだ。
この前まで、ずっと同じだった。
何かが私の内臓をぐるりと駆け巡る。
自分が自分じゃなくなってしまったみたいで、
どこか大事な部分を何処かにおとしてしまったみたい。
⋮
巡る,
⋮
時が経つにつれてだんだん笑顔が薄らいでいく顔。
仄かに香る違和感。合わない目線が合うようになった四月半ば。前は言わなかったこと。変わった性格。並んで歩いた横断歩道。揺らぐ関係性。かつて乗ったブランコ。立ち寄った公園。イブプロフェンを取り出す手。甘い花の柔軟剤。ラーメンが吸い込まれる唇。差し出された本。見失った日記帳。鳴らないマリンバ。しまい込まれたペン。暴れる心臓。本の頁に並ぶ活字。吹き鳴らすユーフォニアム。鳴り響くチャイム。轟くドラムセット┈┈┈
今、何してたんだっけ。
┈┈┈物語は、終わらない。
今日も歩いている。
前を見ている。
1歩前進している、歩いている。
歩いているを繰り返して、また歩いている。
慣れた道、慣れた距離、慣れた孤独。
今日もまたあなたの背中には追いつけない。
また信号機が赤になって、距離を遠ざける。
青に変わって、私は歩を早める。
追いつけないまま片思いをして、
恋する私の背中を押すように、
今日もまた追い風が吹いている。
「追い風」
僕はいつも不完全だった。
あれはできない、これもできない
できたとしてもうまくやれない。
でも君はそんな僕のことも肯定してくれた。
君はいつも完璧に見えていた。
でも君は自分のことを完璧じゃない、と苦笑しながら言った。
そんな君の表情はとても不完全な笑顔だった。
「不完全な僕」