僕はいつも不完全だった。
あれはできない、これもできない
できたとしてもうまくやれない。
でも君はそんな僕のことも肯定してくれた。
君はいつも完璧に見えていた。
でも君は自分のことを完璧じゃない、と苦笑しながら言った。
そんな君の表情はとても不完全な笑顔だった。
「不完全な僕」
いつか聴いた音を探していたら、
いつの間にか追いつけなくなっていた。
君の奏でる音はいつでも正確で、
君の奏でる音色はいつも美しくて、
君の奏でる音楽は、私のすべてを虜にする。
毎日毎日基礎を磨いて、
毎日毎日練習をして、
取り憑かれたように奏で続けて、
血眼になって自分だけの音色を探してもやっぱりできなくて、
満足出来ない結果に涙を流している私の横で、
君は笑っていた。
その表情、感情の差が、
残酷なまでに私に現実を突きつけてくる。
やっぱり、君の奏でる音楽は素晴らしい。
あぁ、また私は君の音を探してしまうんだ。
いつの間にか君はいなくなっていて、
もう、追いつけないことを知っているのに。
「君の奏でる音楽」
「__いい名前ですね」
互いに自己紹介を交わしたあと、きみはそう言った。
私はそんなことを言われたことなんてなかったから、
どう反応していいのかわからなかった。
「…なんでそう思う?」
結局言えたのはそれだけだった。
「うーん...
貴女に一目惚れしたから、
他の誰よりも素敵に感じるんだと思います」
きみは微かに笑みを零しながらそう言う。
私の名前は、君のおかげで私にとって特別なものになった。
「ねぇ、私は君もいい名前だと思うよ」
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「私の名前」
わたしの視線の先には君。
君の視線の先には君の好きな人。
どうしても叶わない片思い。
無理だって、叶えることが不可能なのは知ってるから、
だから、今も眼の奥に君の姿を刷るのです。
そうして今もまだ、
わたしの視線の先には君が存在しているのです。
「視線の先には」
通る度に思い出す。
あの頃、貴方と一緒に乗ったブランコ。
あれから色々あって、
近くにいるのに心は遠くなってしまった貴方。
知らない土地に触れて、私に夢を見させてくれた。
楽しかった。
あれから、あの道を通る度に思い出す。
楽しかったあの日を。
「ブランコ」