【別れのアイスコーヒー】
凍った星をグラスに。
アイスコーヒーを淹れた
あの星祭で一緒に拾った星々
アイスコーヒーの闇の中で
星は溶けながら輝きをとりもどし
グラスの中にあの夜空がもどった。
あの夜を思い出したら
今から彼が言おうとしている
「さよなら」はなかったことに
なるかもしれない
独りよがりの期待にかけた
おまじない。
でも、彼は、
ためらうことなくミルクを注ぎ
グラスの中の夜空を祓うと
静かに別れを話し始めた。
....
うつむいてあてもなくグラスをかき混ぜながら
私は考えている
いつからこんなにも
すれ違ってしまったのだろう
ミルクを入れない私のグラスの中の夜空では
まだ美しく星が輝いているのに...
<終>
#シロクマ文芸部
お題「凍った星をグラスに。」から始まる小説や詩
#80 どうでもいいこと
皆が下を向いてスマホに夢中の
満員電車で私も下を向いて
スマホの中に答えを探していた。
今流行りのネットAIが、恐ろしいほど
もっともらしい答えをくれたけど
ある意味それはどこかの誰かの受け売りで
私の納得いく答えではないような気がする。
「生きる意味とは?」
電車が止まり
ホームに乗客を吐き出し
エスカレーターが吐き出された乗客を
整頓しながら地上に運んでいった。
...
地上に放り出された私に、
夜空に浮かぶ
大きな広告看板に映し出されたアイドルが
小首を傾げビールグラス片手に
微笑んで言った。
「そんなの別にどうでもいいじゃん
さっさと帰ってビール飲もっ♪」
そうだね
さっさと帰ってビールを飲もう
難しい話は置いといて
今、この生きている瞬間を味わおう__
お題「生きる意味」
#79 自分勝手
眠るのを諦め
ベランダに出て
真夜中の空を見上げた
皆が眠りにつく
誰も知らない闇に
星々が流れては溶けて消えていた
こんな美しい空を独り占めできるなら
眠れない夜も悪くない...
....
もしも、
明日も私に夜が来なければ
またこうして付き合ってほしい
そんな願いを伝えが
自分勝手すぎたのか
星たちは素知らぬ顔をして
流れて消えてしまった___
お題「流れ星に願いを」
【文通:薫風の候】
透明な手紙の香り。
...…がする。
透明なので目に見えないが手紙は確かにこの手にある
手探りで封をあけ
(おそらく)便箋を
これまた手探りでひろげると
香りが一段とはっきりとした。
今回は新緑の風を思わせるような香りだ。
そろそろそんな季節なのですね
手紙に応えるように私はつぶやいた。
この手紙は届くと数日で存在がなくなり
暦の上で季節が変わると
次の手紙がどこからか舞い込む
そんな奇妙な季節の便りが
私に届く理由や送り主についての
心当たりは全くないし
透明なので手紙の内容も読めなくて、
もどかしさはあるけれど
でも、これは「手紙」でしかも「文通」していると
私は確かに感じている
(ちなみに変なヤツと思われそうなので
手紙のことは私と飼い猫だけの秘密だ)
ベランダに出て空を見上げる
少しスモッグがかかっているが
この頃にしては爽やかないい空だ
温暖化とか環境汚染とかなんとかで
季節の移ろいはますますあいまいになってきたが
それでもまだ何とか季節は巡っているのだな
良かった。良かった。
ふふん♪
飼い猫と空を見ながらにやけていると
珍しく新緑の薫るような爽やかな風が吹いた
「こちらも緑の季節になりました
いい季節になりましたね
お便りありがとう」
すかさずひとりごとのようにつぶやいて
私は手紙の返事を風に託した。
季節が巡ってまた手紙が届きますように
ささやかな、
でも大切な願いも込めて__
にゃっ…にゃっ…にゃっ…
猫が小さく鳴いた
飛んでいた鳥に反応しただけなのかもしれないし
猫も返事を託したのかもしれないし..…
お題:「透明な季節の香り。」から始まる小説や詩
#78 至福
ビールと餃子と
推しのアニメで
労う週末
もう何もいらない🍻💕
お題「何もいらない」