ゆきやなぎ

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4/30/2023, 10:43:43 AM

【別れのアイスコーヒー】

凍った星をグラスに。
アイスコーヒーを淹れた
あの星祭で一緒に拾った星々

アイスコーヒーの闇の中で
星は溶けながら輝きをとりもどし
グラスの中にあの夜空がもどった。

あの夜を思い出したら
今から彼が言おうとしている
「さよなら」はなかったことに
なるかもしれない

独りよがりの期待にかけた
おまじない。

でも、彼は、
ためらうことなくミルクを注ぎ
グラスの中の夜空を祓うと
静かに別れを話し始めた。

....

うつむいてあてもなくグラスをかき混ぜながら
私は考えている

いつからこんなにも
すれ違ってしまったのだろう

ミルクを入れない私のグラスの中の夜空では
まだ美しく星が輝いているのに...
<終>

#シロクマ文芸部
お題「凍った星をグラスに。」から始まる小説や詩

4/28/2023, 9:40:12 AM

#80 どうでもいいこと

皆が下を向いてスマホに夢中の
満員電車で私も下を向いて
スマホの中に答えを探していた。

今流行りのネットAIが、恐ろしいほど
もっともらしい答えをくれたけど
ある意味それはどこかの誰かの受け売りで
私の納得いく答えではないような気がする。

「生きる意味とは?」

電車が止まり
ホームに乗客を吐き出し
エスカレーターが吐き出された乗客を
整頓しながら地上に運んでいった。

...

地上に放り出された私に、
夜空に浮かぶ
大きな広告看板に映し出されたアイドルが
小首を傾げビールグラス片手に
微笑んで言った。

「そんなの別にどうでもいいじゃん
さっさと帰ってビール飲もっ♪」

そうだね
さっさと帰ってビールを飲もう

難しい話は置いといて
今、この生きている瞬間を味わおう__

お題「生きる意味」

4/26/2023, 10:02:38 AM

#79 自分勝手

眠るのを諦め
ベランダに出て
真夜中の空を見上げた

皆が眠りにつく
誰も知らない闇に
星々が流れては溶けて消えていた

こんな美しい空を独り占めできるなら
眠れない夜も悪くない...

....

もしも、
明日も私に夜が来なければ
またこうして付き合ってほしい

そんな願いを伝えが
自分勝手すぎたのか
星たちは素知らぬ顔をして
流れて消えてしまった___

お題「流れ星に願いを」

4/23/2023, 8:42:04 AM

【文通:薫風の候】

透明な手紙の香り。
...…がする。

透明なので目に見えないが手紙は確かにこの手にある

手探りで封をあけ
(おそらく)便箋を
これまた手探りでひろげると
香りが一段とはっきりとした。

今回は新緑の風を思わせるような香りだ。

そろそろそんな季節なのですね
手紙に応えるように私はつぶやいた。

この手紙は届くと数日で存在がなくなり
暦の上で季節が変わると
次の手紙がどこからか舞い込む

そんな奇妙な季節の便りが
私に届く理由や送り主についての
心当たりは全くないし
透明なので手紙の内容も読めなくて、
もどかしさはあるけれど
でも、これは「手紙」でしかも「文通」していると
私は確かに感じている
(ちなみに変なヤツと思われそうなので
手紙のことは私と飼い猫だけの秘密だ)

ベランダに出て空を見上げる
少しスモッグがかかっているが
この頃にしては爽やかないい空だ

温暖化とか環境汚染とかなんとかで
季節の移ろいはますますあいまいになってきたが
それでもまだ何とか季節は巡っているのだな
良かった。良かった。

ふふん♪
飼い猫と空を見ながらにやけていると
珍しく新緑の薫るような爽やかな風が吹いた

「こちらも緑の季節になりました
いい季節になりましたね
お便りありがとう」

すかさずひとりごとのようにつぶやいて
私は手紙の返事を風に託した。
季節が巡ってまた手紙が届きますように
ささやかな、
でも大切な願いも込めて__

にゃっ…にゃっ…にゃっ…
猫が小さく鳴いた
飛んでいた鳥に反応しただけなのかもしれないし
猫も返事を託したのかもしれないし..…

お題:「透明な季節の香り。」から始まる小説や詩

4/21/2023, 8:42:36 AM

#78 至福

ビールと餃子と
推しのアニメで
労う週末
もう何もいらない🍻💕

お題「何もいらない」

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