またね!
淡く霞む朝焼け空。いつもより早く目覚めた朝に窓の外を見つめた。少し前までは、帰りの遅い
太陽を凍えながら待ち望んでいた。
「今日は随分と帰りが早いのね」
私は丸い光に囁いた。
「今日は随分と出掛けるのが早いわね」
私はもう見えない月にそう告げた。
窓を開けて少し冷たい空気に冬の背中を感じな
がら温かい日差しを浴びた。
(もう春が来たのね。)
私は溢れ出る沢山の冬にまたねと呟いた。
「温かいセーター、重いコート。小さなカイロ。
霧の朝に暗い帰り道。またね、また1年後私に
寒さを伝えて別れと出会いの準備を手伝って
ください。また寒い中私を温めてください」
春を迎え、桜舞う中で別れに涙して、
夏の盛り、冬の肌寒さを恋しく想い、
秋が訪れ、冬の面影を日々見かける。
その先でまた出会いましょう。
「またね!」
春風とともに
いつも歩く通りに春風が吹き抜ける
心地よい風が吹く度桜が舞っていた
ひらひらと舞い落ちる花弁は紙吹雪のようで
出会い別れを噛み締める者達を祝福していた
私は1本の桜の木の枝を握り締めた
大切な人から貰った凄く大切な宝物
枝の咲きにはいくつか桜が咲いてた
そんな小さな桜が春風とともに飛んでゆく
でも優しい春風は私が背負っている重荷を
飛ばす程の強さを知らなくて季節が巡る中
私は何一つ変わらないままだった
春風とともに飛んでゆきたい
私が知らないところまで
私を知らないところまで
そしたら、そのさきで
何か変われる気がする
生き直せる気がする。
だから春風ともに遠く離れた空の向こうで
消え去りたい――
春爛漫
家に帰る暮れ六つ時
微かに明るい青空は
初春の訪れを示した
子供達が帰ったあと
公園のベンチに座り
温かい風を感じてた
ある桃色が横切った
ふと上を見上げると
桜が月に照らされる
桜咲く夜風の景色が
星々のように美しい
春爛漫という刹那を
私は心に深く刻んだ――
七色
空に霞む七色の虹
空が晴れ渡る序章
ビニール傘越しに
ある虹を見上げた
完全に消えるまで
その色を見つめる
雨は好きではない
でもまた待ち望む
七色の虹を見るために――
君を探して
唐突に始まった終り無きかくれんぼ
空の果てに隠れた君を、探し求める
結末など来ないというのに
どれだけ君の名を遠くに叫んでも
本の様な自由な展開を期待しても
会える事は無いというのに
過去に生きる君は何度もみたのに
今宵を生きる君はどこにもいない
でも生きる君を探している
今すぐ君に会いたい
会う方法など知っている
でもそれを許してはくれない
だけど…
「ねぇ…もういいかい?」
もういいよ――