難しいお題が来たもんだ。ここ最近、恋というものをしていない。単純に出会いが無いのはもちろん、過去の出来事から少しトラウマ気味になっている。
しかし大好きな相手から愛の言葉を言われる憧れはもちろんある。公共の場でイチャイチャしたいだとか、誕生日に特別なプレゼントが欲しいだとか、そんな派手な体験は要らない。ただお互いに日頃からの感謝とともにもうひとつ愛のこもった言葉を紡ぐ。それだけで生活が華やかになること間違いなしなのだ。まずは相手から見つけないとね。
友達の話をすると長くなるが、今日はいちばん古くから付き合いのある幼なじみに絞って話をする。
彼女とはもうすぐ20年来の付き合いになる。保育園の頃から中学まで一緒、離れても高校の塾が奇跡的に被っていたり、何かと縁もある。
じゃあめちゃくちゃ仲が良かったと聞かれると簡単にYesとは言えない。向こうは冗談半分でも半ばいじめみたいな事をされたこともあるし、貸した教科書に落書きをされて帰ってきたこともある。後者については先生に覗かれるリスクを除いては割と楽しかったから良いけど、文にするとひどいなこれ。今はお互い大人になって落ち着いた付き合いをしている…と思う。
なんだかんだで一緒にはいるけど性格は真逆だった。人見知りでオタクの巣窟である美術部の一員だった私にとって誰とでも仲良くなる吹奏楽部の彼女には憧れもあった。他校の生徒とも簡単に仲良くなるのはもはや才能だった。話を聞く度「すごいなぁ」とぼんやり思っていたのを今でも思い出す。
彼女は大学に進学し、地元を離れて隣の県に引っ越した。再来月、彼女の元に遊びに行く予定だ。
その日はアパートへの引越しも終わり、住み始める日だった。大学生になった私は、隣県のワンルームアパートにすむことになった。学校から程よく近く、家賃もかなり安い。好条件のアパートだった。家族総出で何日もかけて行われた引越し作業も終了。私以外の家族全員がアパートから出ていき、車に乗り込む。それを窓から見ていた。じわじわ込み上げてくる寂しさ。何度も手を振る家族。
「行かないで」
それが言えたらどれだけ良かったか。しかし出来上がった自室を前にしてそれだけは言えなかった。今日から一人暮らし。今日から新生活。今日から大人……。酷いホームシックになって地元に帰るのはもう少し先の話。
「泣くなよ」
「うう、だって」
遠くまで引っ越すことが決まった日、僕はいの一番に親友に伝えた。幼い頃から泣き虫だった彼は話を聞くやいなやすぐに涙を流した。
「二度と会えなくなる訳じゃないんだからさ」
「それでも、ずっと一緒にいた君と別れるのは嫌なんだよ」
泣き止む気配が一向に無い。困った。ふと空を見上げると、秋晴れの空が広がっていた。
「あ…。なあ、見ろよ。綺麗な空」
「え?…本当だ、どこまでも青いや」
「寂しくなったら、この空を見あげればいい。離れていても、空で繋がってるって考えれば多少は寂しさも薄まるだろ」
「うん…そうするよ。見上げる空は同じだもんね」
親友はブランコから立ち上がり、改めて空を見上げた。その目からもう涙は流れておらず、代わりにどこまでも続く青が写っていた。
今年は十月のはじめ辺りに衣替えをした。自室のタンスと居間のタンスの中身を入れ替えるだけの、簡単な衣替え。替えながら、ブラウスとかシャツが多いなぁとか、この服は今シーズン一回も着なかったなぁとか考えている。それにしても服が少ない。元々ファッションに頓着が無いため、数種類の服を着回すというミニマリストじみたことをしている。しかし大人の女性と呼ばれる歳頃、これじゃいかんと何着か買い足した。今年は色々な服を着れるといいなぁ。