絆
まだ何も知らなかった頃。
彼らとは死ぬまでずっと友達でいるのだと思っていた。
そうじゃなくなる想像はできなかった。
少し知り始めた頃。
縁は意外と簡単に切れてしまうものだとわかった。
小さいコミュニティから離脱すると
世界を少しだけ俯瞰した気になっていた。
知りすぎてしまった頃。
なにもかも信じることができなくなっていた。
大人の言葉は汚くて、子供の言葉は癪に触った。
自分以外の人間が気に入らなかった。
そうやって生きて、そうやって死んでいった。
僕の祖父はそういう人だった。
臆病で癇癪持ちで反抗すれば手をあげる。
何もかも知った気になって人を見下す大人。
祖父は人間が嫌いだったけど、
僕はそんな祖父が嫌いだった。
だってあんたの葬式に来たのは僕だけだったから。
あんたもわかってたんだろ、
自分の葬式に来る人なんていないこと。
骨壷に入った祖父にそう言葉を投げかけた。
もう意味のない僕の言葉。
あんたの耳に届いていたことがあっただろうか。
何度無視されただろうか。
二人暮しだったのに会話は喧嘩の時だけだった。
その喧嘩もあんたの八つ当たり。
あんたとの思い出は胸糞悪いものしかない。
あんたが死んでくれて清々している。
何も知らない人が聞いたら怒るだろうが
訂正するつもりもない。
感謝も謝罪もあんたはしなかったし聞かなかった。
本当にあんたがきらいだったよ。
骨は細かくして海にまいた。
これで僕の仕事も終わり。
僕はあんたみたいにはならない。
人に囲まれて死ぬ。
あんたは僕の反面教師だったな。
そう考えて少し後悔した。
欲望
いちばんになりたい。
特別になりたい。
そんな気持ちばかりが湧いていた。
頭から離れないその気持ちと、
僕がずっとそんなことを考えていることが嫌で、
自分の中身を抉るように何度も何度も吐いた。
そのうち吐き癖がついてしまったけれど、
胃の中が空っぽになることが
僕の心も空っぽになっているようで楽だった。
いつかこの気持ちとバイバイする時が来るだろうか。
いつか「いちばん」に、「特別」に、なれるだろうか。
そんなことを考えて、
また気持ち悪くなってしまった。
遠くの街へ
きっかけは同級生が
バイクの免許を取得したことだった。
僕はバイクに興味なんて全くなくて
彼の話は話半分で聞いていたけれど、
たまに見せてくる知らない街の写真が
どうしようもなく綺麗に見えてしまった。
だから家族の反対を押し切って
自動二輪の免許を取りに教習所に通った。
最初はコケてばっかりで、
嫌気がさす時もたくさんあった。
それでも諦めずに続けていたら、
卒検、学科試験を行うことができ、
ついに普通自動二輪の免許を取得した。
そして迎えた納車の日。
僕の元に来たバイクはとてつもなく輝いていた。
初めて一般道路を走った時の高揚は
今でも忘れることができない。
自分が通っていい道なのか疑いながら走ったな。
それからはソロツーリングも沢山した。
彼が見せてくれた街が
二つ街を超えた先だったことはすごく衝撃的だった。
自分の見ている世界がどれだけ小さくて
自分の当たり前がどこにでも通用するだけではないと
思い知った。
僕はこの先も色んな世界を知るだろう。
そしてあの時遠くに行きたかった気持ちを
僕はこれからも抱えて生きていくんだろう。
物憂げな空
昨日は学校を休んだ。
土日に加え月曜日も休んだので、
今日は三日ぶりの登校となる。
学校をサボるのも慣れてしまい、
誰からも文句を言われることはなくなった。
久しぶりの学校は緊張する。
自分がいなくなった世界は1日とて
何もかもが変わっている。
誰かが誰かと別れていたり、
誰かが誰かと喧嘩をしていたり。
授業も分からないことが増えていく。
そうやって自分が置いてかれた世界を知りたくなくて、
休む日が増えてしまったことは誰にも言えない。
家を出る時間が迫り深呼吸をした。
「大丈夫」と鏡に映る自分に声をかけ、玄関へ向かう。
玄関のドアを開けると、
重なり合った雲たちが世界を覆っていた。
Love you
好きって言うのは簡単なのに、
愛してるは少し照れくさい。
likeを使うのは簡単なのに、
loveを使うのは少し照れくさい。
似たような意味で、似たような言葉。
それなのに言葉ひとつで変わってしまう。
好きって言うならlikeかloveかもハッキリしてよ。