「お誕生日おめでとうー!」
そんな声とともに、ケーキの「キャンドル」の火を吹き消す。
今日は11歳の誕生日。
最近は寒くなってきたけれど、大好きなチョコケーキを食べると少し元気が出る気がする。
11月20日産まれの私の、産まれた月と同じ年齢になる日。
暖かい電気の灯りとチョコケーキに元気づけられて、1年頑張れるようにと願った。
子供の頃いつも行っていた公園は取り壊しになってしまったし、仲が良かった友人とは連絡をとっていない。
大好きだったオレンジジュースはもう売っていないし、通っていた学校は廃校になってしまった。
アルバムを無くした今では、あの頃のことは私の脳内にしかない。
私しか覚えていない思い出だって、きっとある。
私の心には、そんな「たくさんの思い出」が詰まっている。
早く冬が来ないかな、そう思いながらアイスを頬張る。
2XXX年、地球の平均気温はとても上がっていた。
あまりの暑さに体が痛くて外には出られないから、殆どの会社が夏に数週間の長期休暇を設けた程だった。
こんな日々だからか最近はとても冬が恋しくなっている。
冬が来たらあれを食べて、これをして⋯
なんて毎日考えている。
今の夢は冬だ。
だが、きっとその夢は叶わない。
薄々わかっている。
私が生きているうちには冬は来ない。
嫌でも気づいてしまう。
でも、もしも冬が来るなら。
また寒くなるなら。
「冬になったら」、実家で母の手料理を食べながら大晦日の特番を見たい。
そう、思った。
「○○さんが転校します。」
途端に騒がしくなる教室。
受け入れられない情報に、理解が遅れる。
〇〇さんって、、ずっとひとりぼっちだった私と仲良くしてくれた人じゃないか。
〇〇さんが転校したらまたひとりぼっちになってしまう。
なんで?
なんで私だけなの?
疑問をいくらぶつけても現実は変わらない。
あの日、「はなればなれ」になる日は思っていたよりもずっと近いんだって知った。
学校に行こうと外に出ると、弱った「子猫」が目に付いた。
丸くなって暖をとっているようだが体は冷たくなり、ノミがついていた。
食べ物を差し出しても食べないし、目を開かない。
でも少し動くので、まだ生きている。
これはやばい思い、学校に遅刻の電話をして動物病院に駆け込んだ。