8.もう一つの物語
もし君が難病に苛まれずに健やかに地球で暮らせていたら、君の両親と幸せな時間を過ごせていたのかもしれない。
僕が君を治せる鍵になっていれば、あんな悲劇に巻き込まれる事もなく本物の白百合の花畑で満天の星を眺めていたのかもしれない。
今は1人で夜空を眺めているよ。過去とは決別した筈なのに、やっぱり期待してしまう。
君と僕が幸せに生きているもう一つの物語を。
7.距離
いくら良い人と思っていても、距離が近くなりすぎると嫌なところが目につくようになってしまう。
ある程度距離を置こう。
6.眠りにつく前に
日の出と共に目覚めるために、日差しを浴びれるように寝室のカーテンを開けておく。
睡眠の質を良くするために香水を枕にほんのりかける。
さあ、ベッドに潜り込んで、いざ!
いつもこうだ。
毎度毎度スマホを弄ってしまう。
脳の覚醒状態が長引いて睡眠の質が下がってしまう。そう、そうなってしまうのは分かってるんだ。でも止められない。あぁ。また、ぐぅたらしてしまう。
5.永遠に
幼少期からやたら干渉したがる両親のもとで育てられた我々。家庭内暴力で追い込む事が十八番の両親から逃げられない環境で暮らしてから二十数年が経っていた。
「いつまでも親は生きてる訳じゃないからね!」
母の口癖にはうんざりだった。
「儂もいつ天へ呼ばれるか分からんし…」
と自分の死に悲しんで欲しそうな父の相手も面倒くさかった。
我が子の顔色なんざ見ようとしないアイツらにありとあらゆる暴力で精神を蝕まれて若くして死にゆくのか…それまで永遠にこの地獄を味わわねばならないのか…と人生に諦めていた。
しかし
私と性格が似ていた兄が亡くなってからは、気持ち悪い位に私の顔色を伺うようになったではないか。
葬儀を終え仏間に小さくなった白くなった兄を置いた後、父が口を開いてこう言った。
「お前は幸せになったらそれで良いから」
…
ふざけるな。
4.理想郷
調理技術を究める者、プロ野球選手を目指す者、自愛を心得ようとする自傷行為常習者、誰かに対する積怨を水に流そうとする者。
上記は例えばの話で、大抵の人は「こうなりたい、ああしたい」という願望を抱えていることだろう。何か目標を達成するのに短期間かつ生半可で成せるものではない。かなり長期戦になるのは目に見えるのだが、馬の合わない時間泥棒な案件が発生してなかなか成就できない状況に、しまいには中途半端な結果で終えてしまうことだってある。
時間を奪うのではなく、相手と良い意味で向き合い、共有、了察、信愛等分かち合える要素が程良く満たしていれば、きっと思い描いていた人物に成れるのかもしれない。