雫型のモチーフのものに弱い。透明なガラスで今にも滴りそうな瑞々しい造形にであうと、心を奪われてしまう。
あの、雨上がりの葉についた雫。特に新緑の季節は、一層瑞々しく見える。そのなんとも言えない透明感と清々しさ。それをガラスで、すっととどめたようなもの。
イヤリングやネックレスでも、雫のモチーフがついているのを、よく見かける。光を帯びて、ちらちらと揺れて輝くさまに、思わず足をとめてしまうのだ。
「雫」
商品がたくさんおいてある店に行くと、わくわくしてしまう。何か良さそうなものが見つかるのではないかと思う。
店に入ってみる。ああ、これも、あれも…と次から次へと気になる商品が出てくる。まだまだ奥まで、たくさんあるのだ。もっといいものがあるかもしれないと思う。
片っ端から見ていく。さっきのと比べてどうかな、こちらの方がいいかな。いや、あれもあるぞと目移りする。選べない。頭の中がぐるぐるしてくる。そのうち、どれもいらないかもなんて思えてくる。
結局、まあ今日はいいかと店を出て行く。人は選択肢がたくさんありすぎると、選べなくなるらしい。なんだか分かる気がする。
「何もいらない」
もしも未来が見えるなら、見た時から、未来は変わってしまう気がする。未来が今の積み重ねだとしたら、目の前の今をなんとかしていくしかないのだろう。
もし、未来の世界に、自分の力ではどうにもできないことがあったとしたら、どうするだろうか。色々と悩んでしまうだろう。やっぱり未来は分からないほうが、いいのかもしれない。
「もしも未来が見えるなら」
目の前にいる彼女は、いつものように笑って話している。声のトーンは高く、よどみなく言葉が出てくる。その話を、半ば圧倒されるかのように聞く。
たまに質問されることもある。それに少し答えると、またその倍以上に長いおしゃべりが続く。まるで、セリフのように。
短いスカートをはいた足元を所在なさげにゆらしながら、時々長い髪の毛を何度も手でとかす。その抜けた髪を時々、ぽいと下に落とす。そんな彼女をぼんやりと見つめ続ける。
彼女といると、世界はとても色鮮やかに見える。でも、本当は何となく気付いている。こちらに向けられる笑顔は、何かほかの目的のためかもしれない。でも、色のない世界には、もう戻りたくないのだ。
「無色の世界」
桜が満開になって何日か経ったころ、雨が降った。風にも吹かれて、花びらが激しく舞回っている。咲き始めの時は、多少雨が降っても耐えていたけれど、今回はさすがに散ってしまいそうだ。
木の下や、塀の壁にまで、ピンクの花びらがたくさん散らばっている。傘にかかる雨音を聞きながら、しばらく木を見ていた。枝が大きく揺れて、雨風は花を根こそぎ落とすかのように、降り掛かる。
次の日は、快晴だった。雲一つない青空の中、桜の木を見ると、見事に新緑に覆われていた。落ちた花びらは、茶色になって地面を覆っている。緑の葉が主役になって、一気に季節がすすんだ。
「桜散る」