街を歩いていると、今日は妙にぼんやりしている。普通にしていると分かりにくいけれど、踏切を渡る時、横を向いて線路の先を見てみると、よく分かった。
奥のほうがもやっとしている。夕方の日差しをバックに、もやもやとクリーム色のベールがかかっているように見える。
たくさんの人が歩いている。自転車が通りすぎる。話しながら歩く人もいる。街はいつも通り活動的なのに、静かだ。音がないわけではない。
音の層が平坦な気がする。ぼんやり一定のトーンの中に閉じ込められたようだ。やわらかいゼリーのようなものに包まれたところを歩く人たち。
この人たちは、私が見えているのだろうか? はっとする。この世界はなんなのだろう。
「この世界は」
そう聞けたなら、よかったのに。もっと気軽に、気ままに聞いていればよかった。そうできなかったから、ややこしくなった。
少しのすれ違いが、積み重なってどんどんずれ続けて、誤解が生まれたりした。これではいけないと分かっていたけれど、いざとなったら勇気がなくて聞けなかった。
なんだか自分に自信がなかったのだ。自分がとってもちっぽけでダメに見えて、まったくカッコ悪かった。すれ違ったまま、いつのまにか一緒にいなくなっていた。
「どうして」と聞いてみればよかったのだ。もっと気軽に色々聞いてみればよかったんだ。
「どうして」
ずっと夢を見てたい。子どものころから思っていることがある。その道を追いかけていたけれど、途中でその道を離れた。
夢への付き合い方を、考えなおそうと思った。夢は心の奥底にしまって、違う道に進んだ。それはそれでよかったけれど、なんだか自分を生きられていない気がした。
夢にまた目を向けてみた。これまでとは違うやり方をしてみようと思った。楽しい。こんなに没頭できるのだ。心が満たされてくる。それがうまくいこうがいくまいが、自分が喜んでいる。
このまま、ずっと夢を見ていきたい。
「夢を見てたい」
ずっとこのままで…なんて思うと、目が覚める。このパターンの夢は多い。夢? 夢じゃないよね。少し頭がはっきりしてくる。夢かあ…。
かなり、がっかりする。さっきまで見てた、あった、と思うけれど、夢なのだ。あー、幸せだったなあ。夢だけど、よい気分はしっかり残る。
さっきのシーンを忘れないように、何度も思い返して、頭の中に刻もうとする。きちんと目が覚めていないから、まだぼんやりしている。
また、この続きが見られるかもしれない。目を閉じてみる。ストンと眠りにおちる。でも、続きはなかなか見られないんだ。
「ずっとこのまま」
そもそも、朝寝坊したのがいけなかった。慌てて家を飛び出して、余裕がない一日が始まった。焦りは、いろいろなところに伝染するのだろうか。電車の中、立ち寄ったコンビニで、何となくイライラした空気を感じる。
調子悪いなあと思いながら、一日を過ごして帰途につく。朝は急いでいて気づかなかったが、こんなに寒かっただろうか。冷たい風が、容赦なく吹きつけてくる。
いや、本当はそんなに寒くはない。元気な時はやり過ごせる寒さが、今日はじわじわと染みてきているのだ。リセットしよう! 風を切って早足で歩く。すたすた歩き、大きく腕を振る。忘れていた温かさが、ようやく感じられてきた。
「寒さが身に染みて」