夏の暑さにもめげず、道端で見かける夏草は、青々としてさわやかに見える。どんなに日差しが照り付けても、負けない。熱を帯びたアスファルトの隙間や、街路樹の横で、たくましく伸びている。すっすっと黄緑に光る葉、かわいい小さな花が咲いていることもある。
雨の後は、より一層瑞々しい。涼やかで、その群生のそばを通りたくなる。でも、よく半袖の腕などが、後にポツっと赤く腫れてくる。あー、やられた! そのさわやかさは、蚊とセットだった。すっかり忘れて、ついやってしまうのだ。
「夏草」
もっともっとと自分にムチを打って、まだ足りない、ここも足りないと思う。自分にないことばかりに目を向けていた。
苦手なことをがんばるのは、なかなかしんどい。それを乗り越えたかった。
自分の得意なことは、たとえほめられるようなことがあっても、そうかな? となかなか受け入れられない。でも、それをする時は、とても自然で、あっという間に時間が過ぎていたりする。そうか。もっと努力したいものは、できないことではなく、自分の中にあるものだった。
「ここにある」
足のサイズを測るのに、素足でと言われる。
えっ、素足? ちょっと恥ずかしい。普段、甲を覆う靴ばかり履いているので、すっかり油断している。かかと、爪、きちんとしていただろうか。靴下を脱ぐと、糸くずなんかも指についていて情けない。
サンダルを履き、美しい足で歩く人をよく見かける。かかと、足先もよくお手入れされていて、おしゃれだ。足という細部にまで気を配れる人は本当にステキだと思う。
そんな人に憧れながらも、スニーカーで過ごしている。それでも素足は、きちんとしておかなければ、と思う。そして、たまにはサンダルにチャレンジしてみるかな。
「素足のままで」
ずっと好きなことを追い続けていればいいと思っていた。でも、なかなか思うところへはたどりつけない。だんだん苦しくなってきて、やめてしまった。
すると、自分を通る軸がなくなって、ヨレヨレになった気がした。楽になったはずなのに、何か違う。また、嫌になってきた。
本当はどうなのか、心の奥にある思いを探ってみる。やっぱり好きなのだ。好きなのだから、楽しまなくちゃ。もっと気楽にやってみよう。
またもう一歩だけ、踏み出してみることにした。
「もう一歩だけ、」
そういえば、朝起きた時から辺りが静かだった。カーテンを開けても、差し込んでくるまぶしい光がなかった。
外に出ると誰も歩いていない。一人で道を歩く。今、昼なのか、夕方なのか分からない色に包まれている。くもりの日は、空気の粒子が見えるような気がする。まるで、気泡を閉じ込めたお菓子の淡雪のように。
音も淡雪の中に閉じ込められたのだろうか。よく聞こえてくる子どもたちの声も、犬の鳴き声もしない。見える景色はいつも通りなのに、ひっそりとしていて、よく出来た作りモノのようだ。同じ姿をした別の街に感じる。
その時、さーっと、後ろから自転車が通り過ぎた。あっ。カチッとスイッチがはいったような気がした。駅前のざわめきが聞こえ、人がぱらぱらと歩いてきた。いつもの街だ。ほっとしながら、駅に向かった。
「見知らぬ街」