そういえば、朝起きた時から辺りが静かだった。カーテンを開けても、差し込んでくるまぶしい光がなかった。
外に出ると誰も歩いていない。一人で道を歩く。今、昼なのか、夕方なのか分からない色に包まれている。くもりの日は、空気の粒子が見えるような気がする。まるで、気泡を閉じ込めたお菓子の淡雪のように。
音も淡雪の中に閉じ込められたのだろうか。よく聞こえてくる子どもたちの声も、犬の鳴き声もしない。見える景色はいつも通りなのに、ひっそりとしていて、よく出来た作りモノのようだ。同じ姿をした別の街に感じる。
その時、さーっと、後ろから自転車が通り過ぎた。あっ。カチッとスイッチがはいったような気がした。駅前のざわめきが聞こえ、人がぱらぱらと歩いてきた。いつもの街だ。ほっとしながら、駅に向かった。
「見知らぬ街」
8/25/2025, 9:09:02 AM