愛があれば何でもできる?
(宝石の国二次創作)
「貴方は私を愛していると言うけれど、愛があれば何でも出来るの?」
氷のように透き通った瞳で君は問う。僕は勿論、間髪入れずに頷く。君は納得いかない様子で顔を顰めた。
「貴方は私が砕けろと言ったら、意味もなく自らを砕くと言うの?」
「アデュー、君が望むなら。僕は喜んで砕け散るし、海にも嵐にも身を投げよう。けれど、そんな行為に意味がないことくらい、聡明な君なら分かるはずだ」
そんなことで確認などしなくとも、僕の君への愛は揺らがないのに。君が不安にならないように、僕の愛を証明出来たのなら。その為なら、僕はなんだって出来るよ。
後悔
(宝石の国二次創作)
昨日よりも速く走る。今度は必ず間に合うように。昨日よりも鋭く振り下ろす。今度は必ず散らせるように。昨日よりも強くなる。もう後悔などしないように。
「……必ず取り戻すから、待っていろ」
あの日、僕が未熟だったからあいつは連れ去られた。ボルツは強いね、と。柔らかく笑うあいつを僕は裏切った。あの日あの時を、後悔しない日はない。あと少し速く走れていたら。あと少し大きく踏みこめていたら。今の僕なら、あいつを守れるのに。無意味などうしてに、自分でも呆れる。首を振り、空を睨みつける。必ず、取り戻す。そのために僕は強くなるんだ。
モンシロチョウ
(宝石の国二次創作)
「モンシロチョウ、好きだったっけか?」
スピネルが学校に迷い込んだチョウと、指先で戯れていた。白い鱗粉を落とすチョウを慈しむように、優しい眼差しを向ける。
「シリマナイトが教えてくれたから、思い出す」
スピネルの表情に影が差す。久々に聞いた思い石の名前に、動揺する自分がいた。忘れたいような、それでもこびりついて離れない名前。
「そうだっけ」
遠くを見つめて、誤魔化した。思い出せてよかったと思う。思い出してまた自分の罪を責める。あの日俺の身代わりになったあの子の、生きた意味を探し続けている。
忘れられない、いつまでも
(宝石の国二次創作)
「俺のことは、忘れるといい」
そう言ったきり、貴方は動かなくなった。寂しくそっと笑った顔が、頭から離れない。今日で貴方が眠ってから三千五百二十六日目。数えるのは辞めない。数えるのを辞めてしまったら、貴方がもう目覚めないと諦めたようだから。
「パパラチアを忘れた日なんて、ないよ」
答えは返ってこない。呟きは風に溶けた。ねぇ、あの時なんで忘れろなんて残酷なことを言ったの?忘れられるわけない。忘れられない、いつまでも。貴方はあまりにも鮮やかで、あまりにも優しかった。
「覚えているから、はやく目覚めてよ」
貴方がいるだけで世界が色付くんだって、ちゃんと教えてあげるから。
久々の更新です。これからもよろしくお願いします。
届かぬ想い
(宝石の国二次創作)
届かぬ想いを抱いている。届けようとしてないんだから当然だけど。君のことを大切に思っているけれど、それを知られるのは恥ずかしくて、どうしたって言葉にはならない。君が僕だけを好いている、そんな確証があれば話は別だけど。君は誰にだって優しい。
「ギューダ、寝てないで見廻り行くよ!」
「あと十分」
君を少しだけ困らせたくて、いつも子供のような駄々をこねる。呆れた君がそれでも諦めず、僕の横に座ることにこの上ない幸福を覚える。君が隣にいるだけで満足するなら、こんな想い届かなくたってどうでもいいじゃないか。
「十分経った!もう行くよ!」
「あとちょっと」
痺れを切らした君が僕の腕を引っ張る。壊れることのないように、この距離を保つんだ。