落っこちてるまんまるオレンヂの毛玉
根本から立ち上がってる弱々しく細い毛は
空気の流れに微妙にふるえる。
毛玉は、呼吸のリズムで膨らんだり萎んだり上下する。
見ているのはミルクの夢か。
小さな温度のオレンヂの毛玉。
「子猫」
日差しは暖かくても、空気は透明で冷たい。
青色のタータンチェックのストールをぐるぐるに巻いて、一時間に一本の電車を待つ。
ホームの後ろには色づいた木々が並ぶ。
さらにその後ろには山がある。
空気に溶けるような風が吹くと、木々から葉が剥がされ落ち、ホームに落ちてた葉たちと一緒になって、カサカサ音を立てながら輪を描く。
並木の葉の隙間で光はきらきらと揺れ、黄色の葉は光を透かす。
遠くに電車の影が見えてきた。
「秋風」
最近朝、起きづらくなってきた。
寒くなるとみんなそんなもんでしょう?
ああ、起きたくない。
でも起きなくちゃ。
起きたくない。
そんなわたしにおふとぅんは、微笑んでこう言うんだ。
『また、会いましょう。』
おふとぅん〜〜〜!!!
「また会いましょう」
縁石から落ちたらワニに食べられちゃう。
横断歩道の白い線から落ちたらワニに食べられちゃう。
友達にガイドされながら目を瞑って帰る。
友達にガイドされながら後ろ歩きで帰る。
学校の帰り道は危険がいっぱい。
そしてそこら中ワニだらけ。
「スリル」
眠りにつく前に見る鏡の中の自分が哀愁を誘う。
何も考えず横たわり、一日を静かに終える。
朝になり、カーテンの隙間から一筋の光が差す。
今日は薄曇りに柔らかい雨が降っている。
少し前まで一緒に過ごしていたあなたとわたし。
とても長い時間。
あまりにも普通に終わってしまった。
まるですべてが意味がないことだったみたいだと脳裏に浮かぶ。
道路向こうの川べりのススキは柔らかな雨と日差しを受けている。
こんな歳から何をするっていうんだ。
飛べない翼。
いやそんなものそもそもないか。
跡形もなく抜け落ちてる気がする。
後の人生をどう過ごすのか。
もうすぐ枯れ野原となるだけだろうススキ野を、ただ見つめる。
140作突破記念
「飛べない翼」
前回 11/2 130作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。