sunao

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10/2/2024, 12:39:56 PM

ジャングルジムのてっぺんに、形の無いものがいる。

形を持たないもの。

団地はぐるりと建物で、公園を取り囲むようになっている。

4階のわたしの部屋の窓から見える景色には、多くの部屋がそうであるように、その公園が見え、そのジャングルジムも見える。

秋になって公園の木々の葉が落ちても、

通り雨が降っても、

あいつは変わらずそこにあり続けた。


ある時、うちの家が家を建てて、その部屋を出て行くことになった。

荷物をすっかり運び終わり、
その場所との別れ際に、静寂に包まれた部屋で、あの公園をまた窓から眺めた。

きっと明日もその先も、あいつはあそこでこんな時間にはあんなふうにたそがれて、夕日を見ていることだろう。

なにかの奇跡をもう一度など、待っていたりでもするのだろうか。

誰かが来るのを、待っていたりするのだろうか。


夕日を見つめるあいつを見るのを最後に、もうあいつを見ることはないと、安心するような、だけどなんだか淋しいような、よくわからない気持ちになった。






100作突破記念 わあ、すごい!
といってもいつも通りで特別なことはない。
「奇跡をもう一度」

7/15 20作 7/27 30作 8/4 40作 8/14 50作
8/23 60作 9/3 70作 9/13 80作 9/23 90作
突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。

10/1/2024, 11:51:40 AM

たそがれは
すべてを溶かす

空から青色がおりてきて、紫、赤、黄と夕暮れを溶かしていく。

色分けされたゼリーのように空が溶ける。

小さな三日月は空の割れ目。

逢魔が時の不思議なものたちがこぼれ落ちてくる。

すべてが溶けてまざってる。

たそかれたそかれ

となりはだあれ?




「たそがれ」

9/30/2024, 10:29:42 PM

月の上でうさぎが二羽、ブランコを漕ぐ。

うさぎの前には青い地球が浮かんでいる。


「今日も地球が浮かんでいるね。」

「ああ、浮かんでいるね。」

「いつもとおんなじ場所に浮かんでいるね。」

「浮かんでいるね。」

「いつもとおんなじ景色だね。」

「あまり変わらないね。」

「明日もきっと変わらないね。」

「うん。きっと変わらないね。」

「明後日もきっと変わらないね。」

「うん。きっと変わらないね。」

「きっとずっと変わらないね。」

「うん。きっとずっと変わらないね。」


横に並んだ二羽のうさぎ。

一羽が前に出るともう一羽は後ろに。

互い違いになりながら漕いでいる。




「きっと明日も」

参考 : 9/11「カレンダー」
   9/17「花畑」
   9/19「夜景」
   9/28「別れ際に」

9/29/2024, 12:39:17 PM

静寂に包まれた部屋でドビュッシーの ' 月の光 ' をピアノで弾く。



「静寂に包まれた部屋」

9/28/2024, 1:31:03 PM

月の上にて─



「ちょっと散歩に行ってくる。」

と言ったら、
紙でできたコップのようなものを渡された。

けっこう歩いた時、コップについてた糸がぴんと張った。

なんとなくコップを耳にあてると、

『きこえますか。
 きこえますか。
 どうぞ。』

と聞き慣れた声がコップの中からした。

「きこえてます。
 きこえてます。
 どうぞ。」

とコップに向けて話す。

『そっちの様子はどうですか。
 どうぞ。』

「いつもと変わらない月の上ですよ。
 どうぞ。」

どうぞ。どうぞ。と話し続ける。


何をしにきたんだっけ?





「別れ際に」

参考 : 9/11「カレンダー」
   9/17「花畑」
   9/19「夜景」

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