親友が死んだ。
わたしの携帯には彼女からの一件のLINE。
ふつうならすぐに確認するだろう。
だけど…
わたし達は喧嘩をしていた。
このLINEは彼女のわたしへの最後の言葉になるだろう。
それがどういう言葉なのかでわたし達の今までが決まってしまう気がする。
彼女の死を知る前に開いておけばなんということもなかったろうに。
今となっては開くのにとても躊躇われる。
彼女が死んだ事によって落ち着いた喧嘩の気持ちが再び燃え上がるものであったらどうしよう。
もう喧嘩の続きも仲直りもできやしないのに。
「開けないLINE」
さなぎの時期を終えて殻から出たけど
羽を伸ばすことができなかった。
ぐちゃぐちゃのままの僕の羽。
みんなはきれいに飛べて命を全うしている。
僕もああなるべきだったのに。
このままではいもむしでいた頃より不便で、
他の生き物にすぐに捕まえられるかもしれないし、
他のみんなみたいに命を謳歌する事はできないのだろう。
ああ、空からの世界、僕は見えなかったけど
空を飛んでるみんなはとてもきれいだね。
いろんな命がみんなキラキラしてる。
僕が今持っているのはぐちゃぐちゃな羽を持つものとしての命。
それでも、終わりがくるまで、僕は僕として僕を生きる。
「不完全な僕」
白い毛をした猫さんは
夜は月の雫
朝は朝露
昼はひなたの香り、
ひまわり畑の花の香り、
猫じゃらしの揺れる草むらの香り
を纏って歩いています。
「香水」
言葉はいらない。ただ、見つめ合うだけで気持ちが通じる。
きみは、別の星からきた人。
きみの瞳はこの星の水色や緑をよく映してキラキラしてる。
きみは特別。
みんなは気づいてなくても僕にはわかる。
だって僕はきみから目を離せない。
きみも僕を見つめ、
僕たちの間には言葉にならない気持ちが行き交う。
こんな特別他にないから
だから、きみは別の星からきた人。
「言葉はいらない、ただ・・・」
「台風の目…」
天気予報を見ながらつぶやいた。
「どんなかなあ……」
お母さんがわらった。
「ただ晴れてるだけだよ。」
次の日、学校は休みになって、ぼくは一人で留守番。窓の外は夕べからの雨と風。
しばらくすると、突然風が止んだ。
コンコンコン
誰かが玄関をノックする。
そろうっとドアを開けると、
頭が目になってる水色のワンピースを着た女の子…が、立っていた。
女の子の後ろには雲一つない青空が広がっていた。
「おじゃまします。」
そう言って女の子は家の中に入っていった。
リビングのローテーブルの前にちょこんと座った。
それを見て、ぼくはお湯を沸かして、お客さんにするみたいにきゅうすでお茶を入れて女の子に出した。
女の子は湯呑みを両手で持って、目を閉じてお茶を飲んだ。
閉じた瞳にすき間からお茶を注いでるように見える。
目が痛くないんだろうか。
お茶菓子に家にあったおかしも出してみたけどそれには手をつけなかった。
お茶をずずずと飲み?終えると、女の子はすっくと立って
「ごちそうさまでした。」
と言い、玄関から出て行った。
とたんにごうっ、と強い風が吹いたので、ぼくはあわててドアを閉めた。
閉めきるすんぜん、女の子が風に乗って空にのぼっていった気がした。
夕方、強い雨と風の中、お母さんが帰ってきた。
「ねえ、るすの間、台風の目がきたんだよ!」
「ああ、そうだったねえ。」
雫をはらいながらお母さんが言った。
「突然の君の訪問。」