sunao

Open App

「台風の目…」
天気予報を見ながらつぶやいた。
「どんなかなあ……」
お母さんがわらった。
「ただ晴れてるだけだよ。」

次の日、学校は休みになって、ぼくは一人で留守番。窓の外は夕べからの雨と風。
しばらくすると、突然風が止んだ。

コンコンコン

誰かが玄関をノックする。

そろうっとドアを開けると、
頭が目になってる水色のワンピースを着た女の子…が、立っていた。
女の子の後ろには雲一つない青空が広がっていた。

「おじゃまします。」
そう言って女の子は家の中に入っていった。
リビングのローテーブルの前にちょこんと座った。

それを見て、ぼくはお湯を沸かして、お客さんにするみたいにきゅうすでお茶を入れて女の子に出した。

女の子は湯呑みを両手で持って、目を閉じてお茶を飲んだ。
閉じた瞳にすき間からお茶を注いでるように見える。
目が痛くないんだろうか。
お茶菓子に家にあったおかしも出してみたけどそれには手をつけなかった。

お茶をずずずと飲み?終えると、女の子はすっくと立って
「ごちそうさまでした。」
と言い、玄関から出て行った。

とたんにごうっ、と強い風が吹いたので、ぼくはあわててドアを閉めた。
閉めきるすんぜん、女の子が風に乗って空にのぼっていった気がした。

夕方、強い雨と風の中、お母さんが帰ってきた。

「ねえ、るすの間、台風の目がきたんだよ!」

「ああ、そうだったねえ。」
雫をはらいながらお母さんが言った。



「突然の君の訪問。」

8/28/2024, 11:36:17 PM