sunao

Open App
7/31/2024, 8:39:01 PM

深い深い海の底で、めんだこは、海の泡がひとつ、またひとつと、浮き上がっていくのを見ていた。

そこにおしゃべりなクリオネがやってきた。

「やっほー、めんだこさん、ちょうしはどーお?」

「…………」

「あのさあ、ぼくさ、すごいことできるんだよ。
 みたい?ねえ、みたい?みたいよね?」

「…………」

「じゃあ、やるからね、みててね。」

「…………」

「バッカルコーーーン!!!」

「………………」

「………………」

クリオネさんはなんだか気まずそうになって、
「じゃあ、またね。」
と、どこかに行った。

ああいう時、どういう反応をしたらいいのかわからない………

だから、一人でいたいんだよなあ…………。

めんだこはまた泡が上がるのを見ながら、小さなため息をついた。



「だから、一人でいたい。」

7/30/2024, 6:03:19 PM

ラムネのビー玉をかざす。

地球がぐるっと映る。

空とか、海とか、草木とか、あらゆる生き物とか

そんな風にわたしの目も地球を取り込んでいるだろう。

あなたからこのほしはどう見えていますか?

あなたの水晶体を貸してください。

言葉がきっとそれになるから。



「澄んだ瞳」

7/29/2024, 11:50:52 PM

タンッ、タタンッ

踊り続ける。

たとえ嵐が来ようとも。

なぜなら嵐を呼んでいるのは俺だから。

穀物に実りを。
熱く渇いた大地を潤せ。

足首に数珠のようなものを着けて、男が激しく踊り続けている。


人は彼を雷様と言うらしい。





「嵐が来ようとも」

7/28/2024, 7:36:15 PM

四年に一度のスポーツの祭典では
生首持ったマリーアントワネットがピアフの歌を歌い、血しぶきテープに赤い血煙。
キラキラのゴンドラにはプリマドンナ。
美しい旋律。赤と金のコントラスト。

セーヌ川では絵画の登場人物が、船くらいの大きな顔を川から半分覗かせて、妙に潤んだ目をキョロキョロ。

空には赤いハートの煙幕。

vive la France!と言わんばかりだね。



「お祭り」

7/27/2024, 5:45:21 PM

「あっつい………しぬ………とける………。」

痩せ形色白髪の色素の薄い、いかにも貧弱な俺。夏は特に苦手。大学に行く途中、河川敷のアスファルトの道にへたりこんでいた。

ヒヤッ
‼︎?

「あげる。」

行きつけのコンビニの店員さんが、俺の頬に凍らせたスポーツドリンクを当てていた。

「熱中症にならないように、気をつけてね。」

そう言うと、ひまわりのような笑顔を残して、私服姿でまた自転車に跨り、コンビニのある方向に去っていった。

「神かな………。」
もらったスポーツドリンクを握りしめ、ぼーぜんとしながら言った。
さっきまで感じなかった風が、さあっと吹いた気がした。
なんでのぼせそうになってるんだっけ…





「神様が舞い降りてきて、こう言った。」

Next