春爛漫。
駅の通りの桜並木も満開で、庭には春に備えて植えた小さく綺麗な花が咲き誇っている。若々しい緑が気分を明るくしてくれる。
君が窓の近くにいるのを見つけて「暖かいねぇ」なんて話しかけながら横に座る、君は窓の外の庭の景色に夢中らしく、きらきらした目をこちらに向けてくれることはない。
「あ、モンシロチョウ」
窓の外を、小さなモンシロチョウがふわふわと飛んでいる。君はそいつを捕まえようと体制を整えたあと、ふとこちらをじっと見つめてきた。
「ふふ、開けないよ」
とてもわかりやすい視線に思わず少し笑ってしまった。君は気まぐれで、投げかけた言葉に返事をしてくれることは少ないけど、不思議といつもたくさん会話をしている気がする。
「今度花屋で桜を買ってこようかな...君がイタズラしないなら」
と外から君に目を移す。君ははぐらかすような声色で「にゃぁ」と一言鳴いた。
私は貴方のことがとっても大好きなの。
いつも笑顔なところとか、なんでも前向きに頑張るところとか、私の好きなことを一番に尊重してくれる優しいところとか。
そんな貴方が大好きなの。
...あのね、そう思うのは“貴方”だから。
貴方だから、かわいくて愛おしく感じるの。
疲れていて笑顔じゃない時だって、落ち込んで弱音を吐いちゃう時だって、わがままを言ったって。
そんな貴方だって、私は大好きだよ。
だからね、お願いだから「今は、君の好きな僕じゃないかも」なんて言わないで。
どんな貴方だって“貴方”だから、私は全部まるごとひっくるめて、大好きなんだよ。愛してるんだよ。
これからも、ずっと。
誰よりも、ずっと。
落ち込んでいる恋人に愛を伝える話
ーお題「誰よりも、ずっと」ー
夕日が好きだ。
茜色の空からは、優しい蜜柑色の光が降っていて世界を優しく包み込んでいる。
それでいて、夕焼けというほど、焼けるような焦がれるような色に僕の意識は引っ張られていく。
茜色の空の圧倒的な美しさは、何度目の光景だって僕を掴んで離さない。
あの時の君の言葉が、再生される。まるでたった今僕に投げかけられたかのように鮮やかな君の声。その記憶は、幾年経ったって色褪せることは無いのだろう。
こんなにも鮮明なのに、逆光で君の顔が見えない。
...帰ろう、すぐに夜が追いかけてくる。またね、と僕は夕日を纏う記憶の君に別れを告げ、帰路に着く。
また、明日の夕日の中で。
昔に恋焦がれたあの人が忘れられない僕
ーお題「夕日」ー