色鉛筆

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春爛漫。
駅の通りの桜並木も満開で、庭には春に備えて植えた小さく綺麗な花が咲き誇っている。若々しい緑が気分を明るくしてくれる。
君が窓の近くにいるのを見つけて「暖かいねぇ」なんて話しかけながら横に座る、君は窓の外の庭の景色に夢中らしく、きらきらした目をこちらに向けてくれることはない。
「あ、モンシロチョウ」
窓の外を、小さなモンシロチョウがふわふわと飛んでいる。君はそいつを捕まえようと体制を整えたあと、ふとこちらをじっと見つめてきた。
「ふふ、開けないよ」
とてもわかりやすい視線に思わず少し笑ってしまった。君は気まぐれで、投げかけた言葉に返事をしてくれることは少ないけど、不思議といつもたくさん会話をしている気がする。
「今度花屋で桜を買ってこようかな...君がイタズラしないなら」
と外から君に目を移す。君ははぐらかすような声色で「にゃぁ」と一言鳴いた。

4/11/2023, 9:25:31 AM