何気ないふりで君と同じメニューを選んだり
君が好きなキャラクターの柄の靴下を履いてみたり。
さりげなく君と接点をつくりたくて必死だった。
格好つけたかったんだ。
賢い君にはばれていたかもしれないけれど。
そういえばあの時
急に髪型を変えたよね。
実はあれ、俺がいちばん好きな髪型だったんだ。
かわいい君が更にかわいくなってたまらなかった。
偶然ってすごいよな。
何気ないふり
彼女と出会えて結ばれて。
丈夫な体で飯もうまい。
もうそれだけで
俺の人生ハッピーエンド確定なんだ。
「安い幸せ。」
「うるさいな。あ、嫉妬?みっともないぜ?」
「うざ。」
「きっとこれからもたくさん素晴らしいことが待ってるんだ。まだまだ死ねないな。」
「大変だね。僕はもういつ死んでもいい。」
「そんなこと言わないでくれ。」
「本当だよ」
あの人の輝かしい経歴に
ほんの少しでも影を落とせるのなら
もうそれだけで
僕の人生ハッピーエンド確定だ。
「ハッピーエンドかどうかは自分で決めるものだろ。」
ハッピーエンド
みんながみんな下を向いて
なにやら忙しそうにしているとき
君だけが
上を向いて空を見ていた。
みんながみんな前を向いて
互いを品定めしているとき
君だけは
下を向いて本を読んでいた。
そんな君に見つめられると
俺の全てを見透かされそうで
少し怖かった。
昔は、ね。
今は
君の深い夜空のような目に見つめられると
だらしなくにやけてしまうんだ。
見つめられると
俺の心を君が奪っていく度に
体は甘く痺れて動かなくなる。
私の心をこの人が奪っていく度に
体は軽くなって空を飛んでしまいそうになる。
ぎゅうと抱きしめあう度に
無くなったはずの心がうずいて涙が溢れてくる。
体を少し離して笑い合う度に
互いをまた好きになってそして心が生まれていく。
これまでもこれからもずっと。
My Heart
あれがほしいとかこれがほしいとか
ああなりたいとかこうなりたいとか
ただ虚しいないものねだり。
「良いじゃないか。ないものねだり。
人生一度きり。欲深く生きていけばいい。」
簡単に言ってくれる。
その涼しい顔ぐちゃぐちゃにしてやろうか。
「ないものねだり、ってさ絶対に手に入らないから
ないものねだりなんだ。知ってる?」
「もちろん。言葉の意味は知っているとも。
しかし手に入らないと決めつけているのは自分自身だ。
知ったような顔で生意気に悟ったふりをするな。」
出た。この顔。
爬虫類のように目を細めて人を見下したように笑う。
僕の一番好きな人の一番嫌いな顔だ。
「じゃあこれはないものねだりじゃないってこと?」
いけすかない爬虫類に近付いていく。一歩、また一歩。さあ逃げろ。抵抗しろ。
「さてね。確かめてみたまえ。」
本当にぐちゃぐちゃにするぞ。
ないものねだり