あれがほしいとかこれがほしいとか
ああなりたいとかこうなりたいとか
ただ虚しいないものねだり。
「良いじゃないか。ないものねだり。
人生一度きり。欲深く生きていけばいい。」
簡単に言ってくれる。
その涼しい顔ぐちゃぐちゃにしてやろうか。
「ないものねだり、ってさ絶対に手に入らないから
ないものねだりなんだ。知ってる?」
「もちろん。言葉の意味は知っているとも。
しかし手に入らないと決めつけているのは自分自身だ。
知ったような顔で生意気に悟ったふりをするな。」
出た。この顔。
爬虫類のように目を細めて人を見下したように笑う。
僕の一番好きな人の一番嫌いな顔だ。
「じゃあこれはないものねだりじゃないってこと?」
いけすかない爬虫類に近付いていく。一歩、また一歩。さあ逃げろ。抵抗しろ。
「さてね。確かめてみたまえ。」
本当にぐちゃぐちゃにするぞ。
ないものねだり
3/27/2024, 3:52:31 AM