moon 《設定パクリ厳禁》

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9/11/2024, 12:15:06 AM

来ない。
気まぐれにどこからともなくわいてきてワタシに魔法の稽古をつけていくあいつが、30日経っても来ない。
来なかった最長記録は20日くらい、最近は毎日のように来てたからさすがに心配になる。
「〇‪✕‬、街に冷納機を買ってきてくれる?どうやら壊れたみたいで」
里親の女はワタシが学校へ行かないことをいいことに、面倒な仕事を頼んでくる。もう3年一緒にいるが、こいつは嫌いだ。
「分かった」

街へ出た。人が多い。人混みも嫌いだ。人間っていうものがまず嫌い。
ワタシには嫌いなものが多かった。
「ねえ、今日目元をさ-=-$¥*@’♪♡>;」
「⊿⊂●ゞんでさ、そいつがまたゝ●厂厂乁⊂乁灬$+=……」
「´/##"¥彡★〃『」
うるさい、ろくなこと言ってないんだから黙れば良いのに。
「灬$)¥\□ヽ▼□∥_」
「行方不明らしいよ、」
雑音の中に飛び込んできたその黄色い単語に足が止まった。
「そうなん?相当強い奴だろうから暗殺なんてないと思うけど」
「いやそれが、『白い道の先でまた会おう』って言葉を残して急に消えたらしくて」
「何それ白い道…?んでそれから音沙汰ないってこと?」
「そうそう、でも死んでたら結構ショックだよなー警察相手に無双しててかっこよかったから」

「「怪盗ボルタミシェル」」

息が止まった。


…行方不明?
…あいつが?

遠くに見えていた白い光が消えた。
この世界が真っ黒に暗転して、周りには嫌いなものたちが蠢くばかりだと気づいてしまった。

9/10/2024, 1:43:38 AM

「ラリアは何処に?」
「ラリア?」
どうやら肉屋の店主らしき男は注文もせず質問してくる女に不思議そうな顔をした。
「英雄ラリアのことかい?」
「そうよ」
「どこだったっけな…多分王家の共同墓地に埋められてると思うで」
当たり前のようにそう返されてすとんと落ちた。
「そうよね、有難う」
やはりもう彼女はいないのだ、復讐したい、死んでたまるかという一心で生きてきたのにこれでは私は何故生きているのだろう。
英雄ラリアに屈したあの時。初めての敗北。
その瞬間はもう私の中だけのものなんだ。
私はまた最強に戻ってしまったと思うと可笑しい。あの英雄は何をしているんだ、巨大な悪が舞い戻って来たと云うのに。
永遠の平和を守るのでは無かったのか嘘吐きめ。
「じゃあ…今世界で1番強い魔法使いは誰かしら」
「またお前さんは不思議なことを訊くねえ…まあ魔王様じゃねえか、普通に考えて。あの人達はすげえよなあ」
「そうね…」
じゃあ行くわ、と結局何も買わずに去った私にただ気をつけるんだで、と見送ってくれた店主は多分優しかった。
そこから私は魔王の元へ発った。
でもきっと、そのときから私は分かっていた。
ラリアより、あの世界の正義を具現化したような圧倒的な強さを持つ魔法使いより強い人間など存在しないと。

彼女は死して1000年しても尚、私の唯一無二の存在だった。