来ない。
気まぐれにどこからともなくわいてきてワタシに魔法の稽古をつけていくあいつが、30日経っても来ない。
来なかった最長記録は20日くらい、最近は毎日のように来てたからさすがに心配になる。
「〇✕、街に冷納機を買ってきてくれる?どうやら壊れたみたいで」
里親の女はワタシが学校へ行かないことをいいことに、面倒な仕事を頼んでくる。もう3年一緒にいるが、こいつは嫌いだ。
「分かった」
街へ出た。人が多い。人混みも嫌いだ。人間っていうものがまず嫌い。
ワタシには嫌いなものが多かった。
「ねえ、今日目元をさ-=-$¥*@’♪♡>;」
「⊿⊂●ゞんでさ、そいつがまたゝ●厂厂乁⊂乁灬$+=……」
「´/##"¥彡★〃『」
うるさい、ろくなこと言ってないんだから黙れば良いのに。
「灬$)¥\□ヽ▼□∥_」
「行方不明らしいよ、」
雑音の中に飛び込んできたその黄色い単語に足が止まった。
「そうなん?相当強い奴だろうから暗殺なんてないと思うけど」
「いやそれが、『白い道の先でまた会おう』って言葉を残して急に消えたらしくて」
「何それ白い道…?んでそれから音沙汰ないってこと?」
「そうそう、でも死んでたら結構ショックだよなー警察相手に無双しててかっこよかったから」
「「怪盗ボルタミシェル」」
息が止まった。
…行方不明?
…あいつが?
遠くに見えていた白い光が消えた。
この世界が真っ黒に暗転して、周りには嫌いなものたちが蠢くばかりだと気づいてしまった。
9/11/2024, 12:15:06 AM