咲薇 葵

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11/4/2023, 1:13:38 PM

【哀愁をそそう】

綺麗な丸顔、高い鼻、薄いフレームの丸メガネの奥にある奥二重の目、ここまで顔の特徴を挙げられるほどに僕は美紗に恋をしているのかもしれない美紗は飛び抜けて可愛い訳ではないが、僕には誰よりも可愛く見えた。退屈な授業の中で恍惚と見てしまっている。美紗が雨の日の蜘蛛の巣のようで、美紗から目が離せなかった。「キーンコーンカーンコーン」授業終了のチャイムだ。少し前までは50分が永遠のように感じられたのに、今は一瞬にして50分が過ぎてしまう。
「ねぇねぇ、柳樂諒の新作よんだ?」
美紗が話しかけてきた。
「まだ読んでないんだよね。最近眠くて寝ちゃうから」
「そっか。読んだら教えてね。一緒に語ろ!」
「うん。あと今度さっ」
「美紗ーご飯食べよー」と美紗の友達が割って入ってきた。
「う、うん。バイバイ斎藤くん」
大事なことは言えなかったが、放課後まで時間はあるから焦る必要は無いと思った。それより僕も昼ご飯を食べなきゃと思い、親友の蓮のとこに向かった。いつも通り何気ない話で盛り上がっていると、蓮が突然
「さっき美紗と話してたけど、美紗のこと好きなの?」と聞いてきた。僕は多分美紗のことが好きだが認めたくなかったし、何より恥ずかしいので僕は
「別に好きじゃない」と答えた。それに蓮は、
「それなら良かった」と意味深なことを言ってきた。僕は話題を変えたかったので直ぐに別の話題に変え、そのままいつも通りの昼休みが終わった。
 美紗に何度も話しかけようとしたが、タイミングが悪く、話しかけられなかった。なぜこうゆうときに限って話す機会がないのかと何かを恨みたかったが、何を恨めばいいか分からず何とも言えない気持ちになった。
 家に帰ってからはラインを送ろうと思い文章を書いては消してを繰り返した。結局ラインを送ったのは、夜の10時と中々遅くなってしまった。僕はすぐに返信がないのは分かっているがスマホのロックを解除したり無駄にスクロールしたりとスマホを手放せないでいた。そうすると「ライン♪」と通知がなった。僕はすかさず携帯を見た。そこには蓮の「童貞卒業しました」としょうもないメッセージが来ていた。少し我に帰ったところでまた蓮から連絡が来た。「かわいそうなお前にハメ撮り送ってやるよ」と言われ、今日まだ抜いてないなと蓮のハメ撮りで抜くのは尺だが、少し期待してしまった。その動画を見てみると見たことある顔が出てきた。中の女性
は、「あっ//あっ///」と喘いでいる。そこで喘でいる女性は美紗だった。僕は一瞬唖然とした。どうするべきなのか分からなかった。だが気付いたときには手は下を触っていた。
「うっ…」
蓮に返信しなきゃと思いながらも、「1つ2つ3つ…」と天井の訳の分からない点を数えていた。

11/4/2023, 7:54:44 AM

【鏡の中の自分】

鏡の中の自分が好きだ。写真に写る自分は鏡の中の自分にどこか劣って気持ち悪いし、誰かといるときや一人でいる自分も気持ち悪い。鏡の中の自分を見ていると自分のしたい表情になれる。私はいつも鏡の中の自分が本当の自分になってしまえばと思う。そうすれば、私は私のことをもっと好きになれるのに。
 そんなことを思いながら生きていると、自然に背中を丸めて、過ごしてしまう。だから私には友達も彼氏もいない、だからといって、秀でた才能があるわけでも趣味があるわけでもない。それだから仕事での休み時間や家での空いた時間はひたすらスマホに向かっている。いつも通り私は家でスマホを見ていると、ある動画が目に入った。それは「自分の顔が好きになりたくて整形した結果」という動画だった。最初は何気ない気持ちで見ていたが、動画が進むにつれて私はその動画から目が離せなかった。やがてその動画が終わると、私は「整形がしたい」という衝動にかられた。しかし整形というのは、ハードルが高いし世間からの理解もまだ乏しい。だけど整形したい。そんなことを考えているとさっきの動画が垂れ流されているのに気付いた。私はまだ有り余る時間を潰すために他の動画を見ようとスマホの画面を下にスワイプしようとした。そうすると私の目にはコメント欄が目に入った。整形への後押しが欲しい訳ではなく、みんながこの動画をどう思っているのか気になって、私はコメント欄を見た。コメント欄には私が求めた以上のものがあった。「整形した人は自分の顔を好きになれるし、周りもかわいい子見れて嬉しいから整形はもっと世間に広がるべきでしょ!!」,「私この動画で整形することを決めました!整形したことで毎日たのしいし、友達も増えた気がするから迷ってる子はしてみてほしいな〜♪」とかっていうコメントがあって、整形は全く悪くないんだと気づいた。
 だけどそのためにはお金が必要で、貯金は元々あったが、それでも足りないので副業を始めた。数ヶ月も経てば目標金額がたまった。私はすぐに美容整形外科に行った。担当の先生としっかり話し、整形は成功した。整形している間、余っていた有給を使い休んだ。上司に1度叱られたが、私には必要な時間だと言い張りなんとか休みをとった。人にここまで歯向かったのは人生で始めてだ。これも整形のおかげだと思い、胸に喜びがわいた。整形をしたあと私は前を向いて過ごせるようになり、職場で友達もできた。友達との写真や自撮りなど沢山写真を撮った。私はその写真たちを見るのが好きだった。そこには、私の好きな鏡の中の自分がいたのだから。しかし次第にその写真たちを見るのが嫌になった。そこに鏡の中の自分は存在しなくなり、鏡の中にしか居なくなってしまったからだ。私はまた、整形した。そうするとまた写真が好きになった。だが直ぐに嫌になってしまった。私はまた整形した。こんなことを繰り返していくうちに気付けば、友達もお金も家もなくなってしまっていた。私の手にはどこで拾ったか分からないブルーシートと一枚の鏡だけだった。