ツユクサ

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12/9/2024, 12:11:28 PM

お題『手を繋いで』

「何、この手。」
「手だよ、手。」
「見たらわかるよ…。」
乾燥していない、細くて綺麗な手を差し出される。その手に、自分の手を乗せろというのか?
「なんで手を差し出したの、って聞いてる。」
ほぼ察しがついていながらも、改めて問いを言葉にした。自分の想像するその手の意味が正しいのか、答え合わせをしたかったからだ。


「手を繋ごう、って」
「なんで!」
意味分かんないよ!と言いつつ、まだその手に手を乗せる勇気がなかった。意味は合っていたようなのだが、いい大人に、いい大人が手を繋ごうだなんて、ちょっと…むず痒い。
しかも、恋人でもなんでもないのに。
「はぐれてしまいそうだから。」
「そんなにぽやぽやしてないよ。」


もう、とため息をついて歩き出す。それから、ふいっと顔を逸らして歩く。
「じゃあ、滑りそうだから。」
「じゃあってなんだよ…。大丈夫だって。」
相手をほぼ置き去りのような形で早足になりながら、舗装された道を歩く。ショーウィンドウや街灯、街路樹で灯るイルミネーションからこぼれて落ちた光がきらきら反射している。


少し拗ねた声色がした。
「わかんないかなあ。私が繋ぎたいの。」
「ええ?きみが?」
いつの間にか隣に来ていたその人へ目をやると、相手は目を細めてこちらを見つめていた。自分の知る限り、この人はそういう感じの人じゃない。意外すぎる誘い方に、少し驚きながら聞く。
「手慰みに。付き合ってくれる?」
そう言われたら、なんだか魅力的な手に見えてくる。しかし、なんだかこちらから手を伸ばすのは悔しくて、私も手を差し伸べた。


花弁が乗るのを、手で掬うように。手が乗りやすいであろう高さへ、掌を向ける。
「きみが手を差し伸べてよ。」
ふ、と笑みがこぼれるのも隠さずに相手の目を射抜く。相手は目を見開いて自分の手を見つめてから、直ぐにふは、と笑いをこぼした。
「そういう所が好きだよ。」
きゅ、と綺麗な手が乗る。自分も壊れ物を扱うように手を握り返した。少し冷たい。
「きみに転がされるのは癪。」
そうコメントを返せば、くく、と相手は喉の奥で笑った。

12/8/2024, 10:14:36 AM

お題『ありがとう、ごめんね』

感謝の言葉から始まって、謝罪の言葉で終わる。
私はいつも謝罪からはじめてしまう。自分を守るために。私の性格を考慮すると、私は相手を思いやる気持ちがないんだろうと思う。

ありがとう、は基本的に相手を幸せにする言葉だ。

ごめんね、は基本的に相手も自分も、ネガティブな気持ちになる。

ありがとう、と微笑んで、ごめんね。と頭を下げるのは大切なことだ。

12/7/2024, 1:55:49 PM

お題「部屋の片隅で」

耳に時計を当てて、音を聞いていた。

ちっ ちっ ちっ

背中が壁に守られている安心感に、身を委ねる。

ちっ ちっ ちっ

目を閉じて、明日の足音を聞いていた。

ちっ ちっ ちっ

体内の時計も、段々音がしてきた気がした。私が、死に向かう音。
私が、終わっていく音。

とっ とっ とっ

明日は足並みが揃ったらいいな。

12/6/2024, 10:29:22 AM

お題『逆さま』

本を逆さまから読んだら、面白いこと、あるかしら。

人が生き返るかな?元に戻るかな?若返ったりするかな?

瓶を逆さまにしたら出てくるのはなんだろう。

水かな?花かな?部品かな?なにかもっと怖いものかしら。

逆さまにしたら見える世界があるかもしれないね!

12/5/2024, 10:28:57 AM

お題『眠れないほど』

布団に身体をうずめながら、本を読んでいた。もそもそ。と、若干、虫のような動きで。
そろそろ眠らなくちゃ明日に響く。明日、眠くなる。でも、もうひと段落先が気になって、次の文章を読んでしまう。かれこれ30分はこれをしている。

我ながら欲深いなと思うのだが、本を読む贅沢というのは止められない。文字を追う目の動きが楽しい。ページをめくる音の気持ちよさ。空想する世界の心地よさよ。

このまま夢の世界に旅立てたら、きっと、しあわせだ。
瞼が落ちてくる。夢の世界へ、漕ぎ出す音がする。
おやすみなさい。

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