お題『夢と現実』
目を閉じていた。誰かが喋る声が耳に届く。木が風に撫でられる音がする。それから、私の前髪を撫でて、去っていった。
太陽が程よくあたたかくて、気持ちが良い。私をそっとしておいてくれるこの空間は、とても居心地が良い。
だんだん、心臓の拍動が落ち着いてくる。意識が、ぼんやり。音は聞こえているのに、だんだん自分の感覚が遮断されていく。
私が、私じゃなくなる。溶けていく。意識は空気と一体になって、朧気になる。どこか心地よかった。
どこか、ここではない別の世界へいく。
私のような、私ではないような、あの世界へ。
お題『さよならは言わないで』
さよなら、と言うと、何だか今生の別れのようで苦手だ。これで会うのは最後でも良いと言われている気がする。
だから、私はさよならと言わないことにしている。
たくさん大きく手を振って、また今度、お疲れ様と言う。
次もあなたに会いたい。
お題『光と闇の狭間で』
ゆらゆらと揺蕩っていた。
どっちつかずで、ぼんやりしたところで。自我もはっきりしなくて、ただ、のうのうとそこにいた。
人みたいだ。
いい人の時もあれば、悪い人の時もある。常に、絶対にどちらであるということなんて有り得ない。ある側面では光で、ある側面では闇だ。
今まで周りの環境からすればたまたま光だっただけで、本当はそれは、深い深い闇、かもしれない。
お題『距離』
それは大切なものだ。
近いからいいものでは無い。時折、離れることも大切だ。
近付いたり、離れたりして、お互いの全容を識っていく。
識ることは、知られることは、怖いことかもしれない。
知らなかったところが浮き彫りになるだけでなく、それが自分や、相手の感じ方で、認識が変わるのだから。
前と全く違う目で見られるかもしれない。もしかしたら、もう口も聞いてくれないかもしれない。
そう思ったら、正直、怖い。
お題「泣かないで」
指でその宝石を掬った。
誰かに酷いことを言われたの。悲しいことがあったの。それとも、嬉しくて?ただ、何となく?
理由はなんだっていいか。
自分の感情に素直になれるえらいきみに、花束をあげる。
沢山の色と、沢山の大きさ。沢山の違う香り。
好きな花はあった?
泣かないで、なんて無責任に言えないけど、素敵な明日になるといいね。