「ミッドナイト」
しーんと静まり返っている夜
冷たく、暗く、虫の音か空の音のみが聞こえる夜
誰も寄せつけず、誰でも迎え入れる夜
何をするのもコソコソと、
しかし何をしても良い気分にさせてくれる夜
ミッドナイト、今回は何をしよう
「こんな夢を見た」
いつもの学校のいつもの授業中。
俺はいつも通り真剣に授業は受けずに、先生の声を子守唄にうたた寝していた。
周りの生徒は、俺と同じように寝てるやつ、隠れてスマホをいじってるやつ、ちゃんと授業を受けてる隣のあいつなど様々だ。
しかし、それはいつもの事。
このままいつも通り授業が終わるんだろうと思っていた次の瞬間。
バリーン!!!
外を隔てていた窓が全て割れた。
音にびっくりして俺は慌てて顔を上げた。
すると、窓側に座っていた生徒の首が全て無くなっていた。
このあまりにも非日常な状況に、泣き叫ぶ女子、騒ぎ立てる男子、慌てながらほかの先生を呼びに行く教師、何故か何食わぬ顔で教科書を見つめている隣のあいつなど教室は大狂乱となっていた。
俺も周りの雰囲気に当てられて混乱してきた。
「一体どうなってんだよ!!」
そう叫び頭を上げた。
途端、息を吹き返したかのように身体が跳ね上がった。
パッと目の前に広がったのはいつもの教室。
いつも通り授業をする教師。
いつも通り寝てるやつ。
いつも通り隠れてスマホをいじってるやつ。
そして、いつも授業を受けてる隣のあいつ。
俺はこんなに鮮明な悪夢は初めてで、授業中でも構わず隣のあいつに話しかけた。
「なぁ、俺今こんな夢を見たよ。授業中に急に窓が割れて、窓側の席のやつの首が吹っ飛んだ夢!!やべーよな。」
すると、あいつは黒板に向けていた顔を向けてこう言った。
「それ正夢だよ」
「タイムマシーン」
「あなたは日本政府が独自開発したタイムマシーンの試用モニターに当選しました。ご協力いただける場合は、以下の指定された日時と場所をご確認の上お越しくださいませ。」
ある日ポストを開けるとそのような文が書かれた1枚のはがきが入っていた。
見たところ普通のハガキだ。
ちゃんと切っても貼ってあるし、何やら政府機関っぽいハンコも押してある。
タイムマシーンなんて、そんなSFチックなもの、どうやって開発したんだ?
あまりにも嘘くさすぎる。
そう思ったが、好奇心には抗えない。
2週間後、俺はハガキに書いてあった会場へ足を運んでいた。
会場はとあるビルの12階の一角だった。
受付を済ませ会場に入ると、そこはデカめの会議室のような雰囲気だった。
目の前には縦長のテーブルが左右に2箇所あり、どちらにもスタッフらしき人が2人付いていた。
左のテーブルにはすでに人がいた。
タイムマシーンってテーブルに乗るほどちっさいのか?
それとも、本物じゃなくて模型とか?
疑問はポツポツと湧き出てくるが、入口で突っ立ってる訳にも行かないので右側のテーブルの前に移動する。
「こんにちは、この度はタイムマシーンの試用モニターにご参加くださりありがとうございます。」
そう言ってスタッフは頭を下げた。
2人ともピシッとしたスーツを着ているし、本当に政府機関の人みたいだ。
「早速ですが、試用モニターの方に移らせていただきますね。」
そう言って一人の人が後ろの紙袋から何かを取りだした。
それは・・・
タイマーだ。
キッチンに置いてあるやつだ。
カップ麺にお湯を注いだ後に使うやつだ。
「・・・は?」
「特別な夜」
今日は月が綺麗だ。
この時期の夜に、外に出るのはとても寒いが、
その寒さが月の端麗さをより引き立たせている。
長い間曲げていた腰を伸ばす。
フーッと息を吐くと夜のキャンバスに白い息が映える。
思えばここまで来るのに相当な時間がかかった。
何度も自問自答し、ほかの最適解を探そうと努力したこともあったな。
しかし、そもそもこれ以外の答えなど初めから無かったのだ。
それに気づくことが出来てからは本当に早く行動できた。
そしてようやくここまで来れた。
今、君は土のドレスを着ているね。
あいつと一緒に選んで着ていたウェディングドレスよりも遥かに美しいよ。
さぁ、土のヴェールをかけてあげよう。
地面に置いたスコップはあえて使わない。
膝まづいて君の美しい顔に優しく土をかけてあげる。
次ヴェールを外す時は僕がそっちに行った時だ。
その時は永遠を誓うキスをしようね。
月が僕たちの牧師だ、僕らの永遠の愛をずっと見守っている。
祝福してくれる人は周りにいないけど、こんな結婚式も素敵だよね。
あぁ、今日は特別な夜になる。
「美しい」
花を見て優しく微笑む美しい君
快晴の下、晴れやかな笑顔を見せる美しい君
私を見てふわりと笑う美しい君
プレゼントを渡すとぎこちなくはにかむ美しい君
あいつに肩を抱かれ、
妖艶な笑みを浮かべる美しくない君
君は美しいのだから、
美しくない君は切り取らないと