「特別な夜」
今日は月が綺麗だ。
この時期の夜に、外に出るのはとても寒いが、
その寒さが月の端麗さをより引き立たせている。
長い間曲げていた腰を伸ばす。
フーッと息を吐くと夜のキャンバスに白い息が映える。
思えばここまで来るのに相当な時間がかかった。
何度も自問自答し、ほかの最適解を探そうと努力したこともあったな。
しかし、そもそもこれ以外の答えなど初めから無かったのだ。
それに気づくことが出来てからは本当に早く行動できた。
そしてようやくここまで来れた。
今、君は土のドレスを着ているね。
あいつと一緒に選んで着ていたウェディングドレスよりも遥かに美しいよ。
さぁ、土のヴェールをかけてあげよう。
地面に置いたスコップはあえて使わない。
膝まづいて君の美しい顔に優しく土をかけてあげる。
次ヴェールを外す時は僕がそっちに行った時だ。
その時は永遠を誓うキスをしようね。
月が僕たちの牧師だ、僕らの永遠の愛をずっと見守っている。
祝福してくれる人は周りにいないけど、こんな結婚式も素敵だよね。
あぁ、今日は特別な夜になる。
1/21/2024, 1:10:17 PM