はるさめ

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9/11/2023, 12:53:10 PM

「…何これ?」

肌を突き刺すような冬の寒さにも慣れてきた頃、遠く離れた異国の地に住む彼から荷物が届いた。

急いで暖房をつけ、暖まってきた部屋の中でココアを飲みながら割と大きさのあるそれを開けてみる。
中に入っていたのはカレンダーのように数字が書かれた箱。
しかし数字はカレンダーと違って24までしか無くて、おや?と首を傾げた。

箱を持ち上げあちこち見ていると、シンプルな便箋がひらりと落ちる。
便箋を開くと、少し不器用な懐かしい字がつらつらと綴られていた。



ふむ。彼からの手紙を読む限り、送られてきた荷物はアドベントカレンダーというものらしい。
今年のクリスマスも帰れそうにないから、せめてクリスマスまで楽しく過ごしてほしいとの彼の想いが詰まった品だった。

「…別に今さら気にしないのにね」

海外に転勤もあるような忙しい職についている彼を選んだのは私だし、一緒に居られる時間が少ないことにも慣れてしまった私には、彼がそうやって気にかけてくれるだけで十分だった。

…嘘。本当は期待していた。

高校1年生のクリスマスイブに付き合い始めた私達は、今年でもう10年の付き合いになる。
周りの環境が巡るましく変わっていく中、お互いを選ぶ気持ちだけは変わらず、気づけばもう25歳を過ぎていた。
周りの人がどんどん結婚し、子どもを産んでいく中で、私はこの気楽な関係で良いんだなんて言っていたけれど、少しずつ焦りが生まれていたのは事実だった。

…彼は私のことをどう思っているんだろう。
私は彼との将来を考えた時に、結婚という文字がよぎらないことは無かったけれど、2人の間でそういう話が出たことは一度もない。

「…どうせならクリスマスプレゼントはプロポーズが良かったよ」

でも、結婚したいのが自分だけなら意味無いもんね。と、無理やり自分を納得させながらアドベントカレンダーを玄関の棚に飾った。

11月30日、クリスマスイブまであと24日。





今日も帰ってきてすぐ、カレンダーの小さな窓を開ける。これが届いてから10日も過ぎる頃には、カレンダーを開くのはもう習慣のようになっていた。

1日目は小さなチョコレート。
2日目はクッキー。
3日目はキャラメル。
4日目は洋酒入りのチョコレート。
5日目はシンプルなリング。
6日目はキャンディー。
7日目はチョコチップクッキー。
8日目はマドレーヌ。
9日目はマカロン。
10日目は綺麗なネックレス。
11日目は星の形のキャラメル。
12日目はマシュマロ。
13日目はくまの形のキャンディー。
14日目はフィナンシェ。
15日目はスノーボールクッキー。
16日目は星座のモチーフが付いたブックマーカー。
17日目はバレッタ。
18日目はカヌレ。
19日目はバウムクーヘン。
20日目はピアス。
21日目はスワロフスキーのネックレス。
22日目はペンダント。
23日目はブレスレット。

そして今日は24日目の窓を開く。

が、その中には何も入っていなかった。
落ちちゃったのかな?と思いながら少しだけ肩を落とす。
何だかんだカレンダーを開くこの日々は私にとって楽しみになっていて、会えない彼の私への想いを確認する作業のようにもなっていた。
だからこそ、楽しみにしていた1番最後に何も無いのは寂しくて。

私は靴を脱ぎ、服もそのままにソファーへ身を投げた。
帰る途中で見かけた何組ものカップルも、美味しそうなケーキも、光り輝くイルミネーションも何ともなかったのに。たったひとつ、カレンダーに何も無かったことが私の心を決壊させた。

「…なんで、なんでいないの。今日は記念日じゃん、ばか…」

堪えていた涙がぽろりとソファーに落ちた時、インターホンが音を立てた。

こんな日に、誰が?と思いながら画面を確認し、思わず目を見開く。
そこに映っていたのは、今いちばん会いたいと思っていた人だった。

慌てて涙を拭い、勢いよく玄関の扉を開ける。


「…っなんで、」

「なんでって、今日は記念日じゃん」


そう彼は笑いながら私のことを優しく抱き締めた。


「…絶対今年も来ないと思ってた」

「うん、毎年ごめんね。でも今年は何としてでも帰りたくてさ」

めちゃくちゃ頑張ったんだよ。そう言いながら、彼は私の涙を拭ってくれた。




しばらく玄関でお互いの体温を分け合った後、
彼はおもむろに身体を離して、

「目を閉じて、左手出してくれる?」

と言った。

私は首を傾げたまま、言われる通りにする。

しばらくして、薬指付近にひんやりとした感触があり驚いて目を開くと、そこにあったのはきらきらと光を放つ綺麗な指輪だった。
思わず彼の顔を見つめてしまう。

「ずっと待たせてごめんね。春にはこっちに戻れることになってさ。言うなら今かなって思って」

「…これは、そういうこと?」

「…うん、僕と結婚してくれますか?」

ずっとずっと待ち望んでいた言葉に涙が溢れ、私は彼に勢いよく抱きついた。

「…よろしくお願いします…!」


アドベントカレンダーの24日目の窓に入っていたのは、クリスマスプレゼントにと願ったプロポーズだった。

9/3/2023, 8:21:59 PM

朝焼けが綺麗だったとか、
一緒に食べたご飯が美味しかったとか、
散歩して眺めた月がはちみつ色してたとか、
2人でごろごろする布団から陽向の匂いがしたとか。

そういう些細なことでも、私にとっては全部きらきら輝いて見えて。
宝物のようなそんな日々に浸りながら、毎秒君への好きを募らせてる。

ね、これからもそんな「些細なこと」を大切にしあえる2人でいようね。

ネガティブなことよりもポジティブなことを、
つまらないことよりも楽しいことを、
言い合いより語り合いを、
飽きがこないように、ずっと新しさを探せる私たちでいようね。










※以下蛇足となります。


こんにちは、はるさめと申します。
こんな風にこのスペースを使うのは初めてで、 変じゃないかな?と気になっています。

私の拙い言葉にハートを送ってくださった皆様、本当にありがとうございます。
お恥ずかしながら、先程初めてハートを送る方法を知りまして。これまでハートをくださった方々はこんな風にして「もっと読みたい」の声を届けてくれていたのか!と驚きました。

私は基本壁打ちのつもりで書いているので、よく分からない世界観や文脈が所々飛んでいる文章を書くことが多くあります。そんな文章でも、見てくれる誰かがいること、もっと読みたいと思ってくれる誰かがいること、本当に嬉しいことだと思いました。
これから私もたくさんたくさん「もっと読みたい!」の想いを伝えていきたいです。

メッセージを送ることはできないので、ここで感謝の気持ちを伝えさせていただきます。
改めて、ハートをくださった皆様、本当にありがとうございます!

8/13/2023, 4:26:00 PM

私たぶんね、心の健康を守らなくちゃいけない側なんだろうけど、私自身が心健康じゃないなって最近気付いちゃったの。

これを書いている夜も、訳もなく不安で。
1人で立っていられなくて、誰かに縋りたくなって。


嫌になっちゃうね。
元気でいたいのに、強くいたいのに。

現実の私は1人縮こまって震えてるだけなんだもの。

心って、どうやったら健康になれるかなぁ、

8/6/2023, 1:53:46 PM

あるところに、白雪ちゃんという女の子がいた。


白雪ちゃんは太陽くんに会うと、顔が熱くなっちゃってダメなんだって。
太陽くんに会うと、溶けちゃいそうになるんだって。

ここまでくれば分かるよね。
そう、白雪ちゃんという人、恋をしています。

白雪ちゃんと太陽くんは正反対のタイプ。
そんな白雪ちゃん、どうして恋をしたのか?


白雪ちゃんガチ勢の私がちょっとだけ教えてあげる。


白雪ちゃんは昔から少し身体が弱くてさ、
白くて細くて儚いから本当に雪みたいだねってよく言われてた。
だけど白雪ちゃん、中身は全然雪っぽくない。
ちょっと人見知りだったり引っ込み思案だったりはするけど、度胸もある強い女の子なんだよ。

白雪ちゃん、「本当は私だってみんなみたいに放課後寄り道したり、夜遅くまで帰らなかったりしてみたいのに。私の身体が弱っちろいせいで、上手くいかない。」ってよく言ってた。
そう白雪ちゃん、全然弱くなんかないの。

まぁそんな白雪ちゃんの意思と反して、過保護に丁寧に扱われることが多かったんだけどね。

そんな日々を壊してくれたのが、太陽くんだったってワケ。

白雪ちゃんのこと、自分の寄り道コースに連れてって門限破っちゃって、白雪ちゃんのお父さんにブチ切れられたらしい。

でもその次の日の白雪ちゃん、いつもよりずっとキラキラしてたんだ。

自分の世界を変えてくれた太陽くんがすごく眩しく見えて、ドキドキしちゃったんだって。

それからの白雪ちゃんは、太陽くんに会う度に顔が真っ赤になってる。

でもね白雪ちゃん、これが初恋な上に、自分が恋してるって気付いてないの。びっくりだよね。

だから白雪ちゃんの当面の目標は、会っても赤くならないで、友達として楽しく話せるようになること。なんだって。

近くで見てる立場としてはもどかしいったらありゃしないけど、初めての恋に奮闘する白雪ちゃんが可愛いから、このまま見守っていくつもり。

まぁ何が言いたいかっていうと、

白雪ちゃんと太陽くん。
白雪ちゃんは、今日も溶けないように必死。ってことだね。

6/28/2023, 6:06:59 PM

今年で3回目。



この季節が近づくと、
君は真っ白のシャツを身に纏う。

少し袖を捲って、日によっては半袖だったりして。

運動部らしく健康的な腕は君を逞しく見せて。
服に隠れた部分と焼け始めた肌のコントラストがやけに眩しく思えて。


ふいに抜けた風が、君の髪を揺らした。




君と、目が合う。





…あぁ、顔が熱くなってゆく。






それもこれも全部、夏のせいだ。

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