題 たくさんの思い出
思い出が抱えきれない。
たくさんの思い出が私の頭をよぎる。
あなたと一緒に過ごした時間が長すぎて、何度も何度も反芻する。
あなたの笑顔、言葉、優しさ、癒し、存在感が、私を救ってくれた。
あなたの言葉、怒り、冷たさ、無関心、傍にいない時間が私を苦しめた。
同じあなたなのに何でこんなに変わってしまうの?
私が変わったの?あなたが変わったの?
それでもね、私とあなたが別れる今思うのはあなたとの時間だよ。
初めて告白した日、緊張で手の先が冷たすぎてあなたにびっくりされた。
初デートの日、あなたが私のこと車で迎えに来てくれたけど、お互い待ち合わせ場所勘違いしてなかなか会えなかった。
お花見行こうって一緒に出かけた日、夢みたいな時間だった。
夜桜が見られる時間まであなたと私は飽きずに横にいて桜を眺めた。
あなたは私のこと、桜より綺麗ってたくさん褒めてくれた。
それから・・・沢山楽しい時間を過ごしたね。
その延長線上で付き合って、結婚して、幸せを形にしたような大切な時を抱きしめていた。
なのに・・・あなたはいつのまにか変わって。
私に冷たくて、無関心で話も聞いてくれなくなった。
一緒に出かけたがらなくなった。
私のこと、冷酷な眼差しで見るようになった。
あなたのことが、わからなくて、分からなくて私は泣くことしかできなかった。
何を言っても言葉は弾かれてしまう。
あなたの冷たい鎧が全てをガードするから。
幸せな思い出も悲しい思い出も私の中にはぐちゃまぜで今混ざっているけど。
やっぱり幸せな思い出が優勢で、私はあなたのことが、大好きだったから・・・。
あなたのこれからの時間が幸せであるように願うよ。
あなたにもらった大切な気持ちや時はもう、何物にも変えられないんだよ。
だから、あなたの幸せを祈ってる。
そして、私は私の幸せも祈ってる。
いつまでもあなたと居たかったけど、それが叶わないのなら、私は私の幸せを探そうと思うから。
次の扉へ向かうの。
ここであなたとは離れてしまうけれど、いつか再会した時は笑顔で会話出来るといいな。
親愛なるあなたへの想いを込めて。
題 冬になったら
「冬になったら何したい?」
デート中彼氏に聞かれて私は考える。
「えーとね〜まず雪だるま作りたい、あとツララ触りたい、後は雪の結晶観察して形見たい、後はねぇ、夜に降りしきる雪を静かに見るのもいいな・・・んーとそれから・・・」
「ちょっ、ちょっとストップ!」
何故か要望通りやりたいことを挙げてみたら彼氏にストップをかけられる。
「え?何で?」
私が不思議そうな顔で彼氏を見ると、彼氏は困ったような顔で話す。
「デートで何したいってことなんだけど?ミウは沢山やりたいことあるんだね」
「あ、そうだったんだ・・・」
彼氏の苦笑いに、私はかぁぁと顔を赤くする。
確かに、いまのってデートでやることではないよねぇ?
でも、冬の季節や雪降ったら心が子供になってしまって、いろいろやりたいことあるし、霜柱踏んだりツララ見たりするのも好きなんだよね。
「やりたいこと、クリスマスの時期のデートなら、一緒にイルミネーション見に行きたい!」
気を取り直してそう言うと、彼氏は笑顔で頷く。
「うん、いいね、綺麗なとこ調べとくよ。ケーキも好きでしょ?近くのカフェ行って食べよう」
「うん、あとね、夜はイルミネーション見に行くなら、午前はプラネタリウムとか映画とかどう?クリスマス系の映画とかやってるかな〜」
「プラネタリウム、いいね、でも、ミウいつも寝てるじゃん」
とジトーっという彼氏の視線を避ける私。
「あはは、毎日疲れてるんだってば〜、じゃあさ、イルミネーションはキミトが調べてくれるから、映画は私が調べるね!いいのあったら教える」
「うん、よろしく、楽しみだよな〜!」
「うん、すっごく楽しみ〜!でね・・・」
私がもじもじしながら言葉を続けると、彼はん?という表情で私を覗き込む。
「もし雪が降ってたら雪だるま、一緒に作りたい・・・」
「オッケー!一緒に作ろう」
私の言葉を受けて、彼がとびきりの笑顔で承諾してくれる。
ああ、今から楽しみだ。
早くクリスマスが来ないかなぁ。
私の心の中はもうクリスマスのことで一杯だった。
題 はなればなれ
もう離れたくないよ・・・。
いつも思う。
何度も思う。でも無理で・・・。
離れなきゃいけなくて。
遠距離に住むあなたとは少ししか会えないから。
いつも話してるけど、毎日電話してるけどメールしてるけど、こうして会える時間は僅かすぎて、全然足りない。
こんなに早く時間って過ぎるんだっけって位に一瞬で別れの時が、やってきてしまう。
いくら会ってても足りないよ。
ずっと一緒にいたいけど、今はまだ無理だから・・・お互い仕事があるから動けないんだけど。
でも、離れれば離れた瞬間に会いたくなるのがもう不条理すら感じる。
こんなにすぐ会いたくなるなら会うことに意味があるのかな。
会うのは一瞬でその後別れると辛くて辛くてまた会いたくて声じゃ足りないのなら、会う意味って辛いだけじゃないのかな。
・・・破滅的思考だ。
分かってるよ、分かってるつもり。
でも、足りないんだよね、あなたが。
圧倒的に足りなさすぎてそんな思考になってしまうんだよね。
いっそ離れたら、考えなくていいのかなって。
現実のあなたと触れて話していたいって思う自分の気持ちが溢れすぎてしまう。
溢れて溢れて飲み込まれてしまったら私はどうなってしまうんだろう。
たまに自分が怖くなる。
あなたはどう思っているのかな?
あなたには話せていない。
そんなこと重いだろうし負担だろうし。
私達の終着点ってどこだろうね?
いつまで続くんだろうね?
私があなたよりあなたのこときっと好きで、こんなに思っていること、あなたは分かってないだろうな。
でもね、もう会いたいから、「今日はありがとう。もう寂しいな、またすぐ会おうね、愛してる」ってメールする。
う〜ん、この文面じゃ相手には伝わっているかも。
願わくば相手も同じくらい私のこと大好きでいてくれますように。
題 子猫
「子猫ちゃん、どこいくの?」
そんな言葉をかけられた日曜の午後、渋谷。
私は最大限の冷たさを持って相手を一瞥する。
そしてそのまま歩いて去ろうとした。
「あ、待ってよ、ねえ」
相手の男性は慌てた声を出すと、私の目の前まで走ってくる。
「・・・何か?」
「何かじゃないよ、何で無視するの?」
「だってくだらないこと言ってたから、何?子猫ちゃんって」
私がため息をつきながらそういうと、相手・・・私の彼氏は目をウルウルさせて反論してきた。
「だって、ほら、僕にカッコ良さがないって前きみちゃん言ってたでしょ?だから、カッコイイ男性が主人公の小説読んだんだよ、そしたら、子猫ちゃんって言ってたから」
「いや、普通に、日常で使ってる人いるかどうか位わかるでしょ!」
私は彼氏のトンデモ理論に即座に強い口調で返答した。
いないでしょ、子猫ちゃんって・・・しかも、私の彼氏だ・・・。
絶望しかない。
「ええっ、そんなの、他のカップルの会話聞き耳立ててるわけじゃないから分からないよ〜!でも、僕頑張って本読んだんだよ、褒めてよ?」
「もー、聞かなくても分かるでしょっ」
とか言いながら、弟系の可愛い顔にふわふわっとした髪の毛でこちらを見つめてくる彼氏の顔に負けてしまう。
あぁ、そうよ、私はいつもこの顔に負けちゃうのよ。
もう、何でそんな可愛い顔なのよ!?
「・・はいはい、偉いよ、ちゃんと私の言う事聞いて調べてくれてありがとう、でも、今度それしたい時は私に参考書籍聞いてくれるかな?」
彼氏の、ふわふわの髪の毛を撫でながら私はちゃんと次回の改善点を忘れずに伝える。
「うんっ、分かった。ありがと、いつも優しいきみちゃん」
とっても嬉しそうに彼氏が私に笑いかけるものだから、私も釣られて口角が上がってしまう。
なんだかんだ言っても、私は彼氏に、メロメロなのだ。
題 秋風
「寒いっ」
ベンチで座って公園デートをしていた私たち。
秋風が一筋ピュ〜っと私たちの間を通り抜けた。
「大丈夫?どこか入ろうか?」
横にいた彼氏がすぐに上着を脱いでかけてくれる。
もう、相変わらず優しいんだから。
私は笑顔で彼氏に頷く。
「うん、どこかカフェに行きたいな♪」
「いいよ、行こうっ」
彼氏は微笑むと、私の手を取って歩きだす。
ゆっくりいつも歩いてくれる。
慈しむように楽しそうに私の顔を見る。
・・・そんなに私の顔見たって楽しいことなんてないだろうに。
でもね、私も彼氏の顔をみていると嬉しくなっちゃう。
ウキウキして、思わず腕に思い切り飛びつく。
「えっ?何?」
彼氏が照れながら私を少し驚いたように見る。
何だかウキウキして仕方ないから飛びついちゃったんだけど・・・素直に認めるのは恥ずかしいな・・・。
そう思った私は、
「えっと、寒くて!・・・うん、やっぱ秋は、寒いよね」
「そうだね、寒かったらもっとくっついていいよ?」
とことん優しい彼氏。
「ありがとっ」
嬉しくてぎゅううっと腕を抱きしめて彼氏に満面の笑みを向ける。
「あ、それ無理・・・」
「え〜?!無理って何よ?」
私が彼氏がそっぽ向いたのを見て抗議の声を上げると・・・。
「違うって、可愛すぎて直視できないの・・・」
「あ・・・」
直球な彼氏の言葉に、私の方が今度は照れてしまう。
「・・・そういうこと言われると照れるんだけど・・・」
「うん、分かってる。僕も照れてる・・・」
なんて言って歩みを止めてしまった私たち。
お互いに視線はあさっての方向で照れあってるけど・・・。
さっきの秋風の寒さはどこへやら。
ひんやりした凍えるような寒さは消えていっていつのまにか全身はポカポカ暖まっていたんだ。