題 友達
友達ってなんていいものなんだと思ってた。
でもさ、面倒なんだよね。
私は3人グループの他の二人を見てため息をつく。
「だから、今日はカラオケ行こうってば」
「えー、今日はプリクラ撮ってそのまま新しく出来たカフェ行きたい」
「カフェなんて別にやることないじゃん、時間潰せないし」
「カラオケつまんない、あんたの歌声永遠聞かされるだけじゃん」
私はまたか、という目で机に座って二人を冷静に眺めている・・・といつものごとくな流れがやってくる。
「ねえ、どっちがいい?プリクラ撮ってカフェだよね?」
「は?抜け駆けしないで、カラオケだよね〜!!」
「・・・ホントどっちでもいいから言い争わないでほしいんだけど」
私がそう言うと、二人は視線を合わせて睨み合う。
「・・・あのさ、それ、カフェ行ってプリクラ撮ってからカラオケじゃだめなの?」
私がそんな二人に打開策を提案する。
「えー。カラオケって気分じゃないんだよね、喉ガラガラになるし」
「私は逆に、カフェって気分じゃない。新作覚えたし歌いたいし」
はぁ〜〜
私は深いため息をつく。どうしろと?
私はどっちでもいいんだけどね。
「じゃあじゃんけんで決めたら?」
「じゃんけん?小学生じゃないんだから、アユミが決めてくれればそっちに従うからさ、決めてよ」
サキがやっぱり矛先をこっちに向けてくる。
やめてよ。いつもそう言うけど、決めたら選ばれなかった方にネチネチ嫌味言われるんだから。
「そーそー、アユミが決めてよ。3人だし、どっちかが2票入ったら勝ちでしょ」
ユカがそう賛同する。
「勝ちって・・・」
そういうことなのかな、と考えながら私は2人の顔に視線を行き来させる。
私を選びなさい感が、圧力の視線を凄く感じる〜。
私は心の中で思った。
確かに友達っていろいろ話せていいよ。
でも、時に非常にめんどくさく負担がかかる。
しかもいつも私が選択係になってしまう。
調整係も楽じゃないよ〜。
私はそう思いながらどちらを選んでも同じように嫌味を言われる未来を進むしかなかった。
題 行かないで
「行かないで」
そう言いたかった。私を見捨てないで。
ずっとそばにいて、そう言いたかった。
でもあなたにはやることがあって。
目標があって。
だからここに留まることは出来なかったんだよね。
あなたは私に向かって優しい瞳で言った。
「私、やりたいことがあるから、違う大学にいくけど、ずっと親友だよ」
ずっとずっと隣りにいたのに。
小さい頃からあなたは私の幼なじみで、支えで、元気の源で、一緒にいたら強くなれたのに。
「うん」
私は涙を溜めた目で頷くことしか出来なかった。
だって、どれだけ夢に向かって頑張ってるか一番知ってたから。
一番近くで見ていたから。
だから止めることなんて出来るわけもなかった。
それでも思ってしまう。
あなたが私とこれまで通り一緒にいてくれたら。
笑ってくれたら。
悩みを相談しあえたら。
いつでも会いたい時に会えたら。
一番大事な親友だから。
だからこそ、一番幸せで居てほしいのに、一番近くにいてほしくて。
そんな揺れる気持ちに私はどうしていいか分からなくなる。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか。
親友は私の頭に軽く手を乗せた。
「何かあったらいつでも何でも話してね」
「うん・・・」
その言葉に涙腺が崩壊してしまう。
行かないでほしい。
行かないで。
あなたは私の希望なんだ。
ずっと横にいてほしい唯一の親友なんだ。
だから、私と一緒にこれからも同じ景色を見ていてほしい・・・。
ひとしきり泣いている私をただ、黙って頭を撫で続けるあなた。
私は落ち着いて深呼吸すると、親友の顔をみて泣き笑いする。
「ごめんね泣いちゃって」
一緒にいたい、いたいけど・・・、やっぱり、親友には自分のやりたいことを追い続けてほしい。
そして私も、親友に誇れるくらい、自分のやりたいことを見つけたい。
今は何もない私だけど、あなたが自分のやりたいことを追っていくなら、わたしもあなたを追いかけるよ。
やりたいことを見つけて、自分を磨くよ。
だって、あなたにがっかりされたくないから。
がっかりしない人って分かってる。それでも・・・。
あなたが誇ってくれる人に、自分が誇れる人になりたいから。
もう少し、強くなりたい・・・。
私から思わずこぼれた言葉に、あなたは微笑む。
「うん、唯ならなれるよ、私の自慢の親友だもん」
その言葉に、また涙腺が緩んだけど、私は強い決意をもって、これからの道を進もうと同時に思ったんだ。
題 どこまでも続く青い空
どこまでもどこまでも続いていく。
私は河原に座って空をじーっとみていた。
見れば見るほど色がキレイで見入ってしまう。
私の中から何かこみ上げてくる。
この青いグラレーション、雲の柔らかなふんわりしたデコレーション。
それら全てを写真に収めたとしても、決してそのままじゃないんだ。
私にしか見えない瞬間があるんだ。
その一つ一つを確かめるように、私は空をジッと眺めている。
瞬間瞬間を記憶したい。
この透明感のある、どこまでも続いている、宇宙までも続いている途切れない青い空。
その無限にも思える空を、今見えている私ってとてつもなく幸せなんじゃないかって思う。
奇跡のような確率で生まれてきた人類。
他の星にはまだ生物だって観測されてない。
だから、私という存在がこの星に生まれて、平和で、この河原で、とてつもなく魅力的な空を見ている瞬間は、私だけの奇跡なんだ。
いくら見ていても飽きない。
そうして放課後ジッと、空を眺めていると、いつしか空は優しいピンク色に色づいていく。
濃いオレンジに変わり、それから紫色に・・・。
夜の気配がしてきた頃、私は名残惜しく感じながらその場を去る。
今日観測出来た軌跡を心の中に記憶しながら。
明日には見られない今日だけの空を心のスクリーンに投影しながら。
題 衣替え
「ねえねえ、見て!この服、こないだ衣替えして出てきたの、私のお気に入りコーデ!」
少し肌寒くなった秋、私は衣替えで出てきた去年の服を着て、幼なじみのハルトの所へいそいそとやってきたんだ。
実はハルトのこと気になってるし、あわよくば褒められたいという下心付きで。
「ふーん」
ハルトは私を一瞥すると、手元の携帯の画面に視線をすぐに移した。
「ちょっと、何よ、その反応?似合ってるとかそういう言葉はないの?」
「似合ってるんじゃない?あ、よく見るとすごーく似合ってたわ」
厭味ったらしくいうハルトに私の怒りゲージがじわじわ上がっていく。
「ねえ、そういう言い方で言われても全然嬉しくないんだけど」
「はぁ?じゃあどういう言い方だと納得するわけ?」
ハルトとこんな会話したいわけじゃないのに。
好きな人とこういう言い合いになっちゃうことに悲しい気持ちになる。
「えっと、ドラマの中のイケメンみたいに、似合ってるよ、かわいいよとか」
「・・・本当に、そんな事言われたいって思ってる?」
ハルトの呆れ顔に私はうつむく。
良く考えるとハルトのキャラじゃなさすぎる。
プラスそんなこと言われたら私の心臓がもたない。
「あ、やっぱ・・・」
いいって言おうとして顔を上げるとハルトが間近に移動してきてた。
おまけに、顎に手をかけて上を向かされる。
「似合ってるよ、ミカ、凄く可愛い」
・・・一瞬で私の体内の血液が沸騰したかとおもった。
グラグラと煮立ったように全身が熱くなって固まっている私を見て、ハルトは面白そうな顔をする。
「大丈夫?凄く赤くなってるけど」
「だ、大丈夫っ、気にしないでっっ」
勢いよくいい切ったけど、ハルトはケラケラ笑ってる。
くそぉ、全然私のこと意識してないな。
みてなさい、絶対に私から視線を外せないように可愛くなってみせるんだから。
私はハルトを強い決意の眼差しで見ながらオシャレ研究頑張るぞ、と思ったのたった。
題 声が枯れるまで
私は歌ってる。
今日も誰もいない広い公園まで来て大好きな歌を空へと響かせる。
音符が空へと飛んでいるイメージで
風に含まれてその音符達が美しくクルクルと上空へと舞い上がっているような想像
私は歌い続ける
歌うのが好きだから
希望だから
何も日常にいいことがないから
人が信用できないから
辛いことしかないから
この世の中に諦めることしかないから
私の心がグレーだから
そうなの
何もないから
私には何もない気がしているから
だからこそ余計に歌いたい気持ちに包まれる
歌声が響くと心が軽くなる
歌が色とりどりの色を持って私自身も包んでくれる気がする。
そうすると身体がふわりと浮き上がって
全てが
全てを癒してくれる気がする
そうして空を見上げながら歌っていると
目尻に涙が浮かんでくる
風でひんやり感じて
このまま何もかも忘れて歌い続けたいと思ってしまう
でもね
いつしか何もかも忘れて歌い続けていると
声が掠れてくることに気がつくんだ
声の限界を感じるまでいつも歌ってしまう
私は苦笑して、それでも胸の中の何かを出せたような、心の色がグレーから淡い緑色に変わったように感じながら
いつもの帰路をたどるんだ
なにもない私
なにもなかった私
でも、私には歌があるんだ
そしてその歌を歌う私、っていう存在があるんだ
歌い終わった時いつも
それを強く意識しては希望の欠片を胸に感じている