題 何もいらない
何もいらない、何一ついらない
私は何も必要ないよ。
お願い神様
だから奈々の恋を叶えてほしい。
私の唯一の大事な親友だから。
そんなふうに願った日。
親友の奈々は、振られた。
よりによって・・・。
よりによって相手は私が好きだと言ったらしい。
許さない。
私の大事な奈々を泣かせて。
何で私なんか好きになるの?
奈々の方がずっとずっと可愛くて、素敵な性格なのに。
私には絶対に理解できない。
その前に・・・奈々を泣かせた相手が許せなすぎて。
奈々は気にしないでって言ってくれたけど、当然ぎこちない感じになってしまった。
嫌だ。
奈々と元のように笑いあいたい。
何もいらないなんて嘘だ。
大嘘。
私は奈々とずっと一緒にいたい。
誰かの戯言のせいで、奈々といられなくなるなんて絶対に許容できないよ。
お願い神様、奈々の側にいさせて。
一緒にいられなくなってこんなに奈々が大事だって気づくなんて。
大好きだよ。
この気持ちは恋とは違うけれど限りなく近い。
私の失えないものを再認識した日。
私は必死に元の関係に戻れるよう祈り続けていた。
題 もしも未来が見れるなら
「未来が見れるなら何を見たいと思う?」
昼休み。
教室で友達の朋子と一緒にお昼ご飯を向かい合って食べていた私は朋子に問う。
私達は机を合わせて、お弁当を広げていた。
朋子はウインナーを箸で持ち上げながら束の間考えた。
「わかんない、なに?」
一瞬後、すぐに返事をすると、ウインナーを口に運ぶ朋子。
「ちょっと位考えてくれてもいいじゃん」
私の不満の声に、はいはい、といいながら、次は卵焼きに箸を伸ばしている。
「あのね、私、未来が覗けるなら、絶対に傘がどう進化してるか見てみたい!」
私の言葉に、朋子は、へえと一言発する。
「もー、反応鈍いなぁ」
「だって、傘なんだって思って」
朋子の返事に、私は力説を始めた。
「たかが傘、されど傘。私、この世で傘ほど面倒くさいのってないと思うの。歩く時も他の人の傘とぶつかったりするし、満員電車で傘あるとみんな濡れるし、いい加減改良されてもよくない?」
「まぁ、そうだね、傘は、前から形も大きさもそんなに変わらないかもね」
朋子が頷きながら言うのに自信を得て、私はたたみ掛ける。
「そうなの、だから、未来に行ったら真っ先に傘がとうなっているか確認したいんだ。どうなってるかな?自動乾燥機付きの服とか?超撥水な服でそもそも服が濡れないとか、頭に電動でヘリコプターみたいに回転して水を弾く機械があるとか」
「よく、そんなこと真剣に考えるよね」
私が話している間もぱくぱくとお弁当を食べていた朋子は、食べ終わって、お弁当のフタを閉めている。
「気になってるんだよね、こうして考えてるうちにひらめいて、発明出来ないかなって思ってるよ」
私が画期的な発明が出来たらいいんだけど。
でも、こんなに考えてもなかなかいい案が出ないって、案外傘が一番画期的ってことなのかな?
「まぁ、葉月みたいな人がいるから、生活は便利になっていくのかもね。私も傘は面倒だから、手を使わなくていい傘を発明してよ」
朋子は私にそう言った。
「手を使わなくていい傘?そうだねっ、それもいいよね、考えてみるね」
私はどうしたらそんな傘が作れるか考え出す。
「ねえ、もう昼休み終わるけど」
そう朋子が言った瞬間に、予鈴が鳴る。
「ええっ!!」
私はまだ大幅に残ってるお弁当を見下ろす。
「ちょっと先の未来を見てたら、もっと早くお弁当たべてたのにね」
そう含み笑いで言う朋子を軽くにらみながら、私は急いでお弁当の残りを口に運び続けた。
題 無色の世界
「水って綺麗だよね」
私は隣を歩くボーイフレンドに話しかけた。
「ん?何?唐突だね」
ボーイフレンドはびっくりしたような反応をする。
「うん、ほら、あそこ、噴水あるでしょ?」
私達は公園でデートしていた。図書館の帰りに公園の近くのカフェに向かうことになったんだ。
「あるね、噴水」
「私、図書館帰りにいつも近くを通ったり、噴水の脇に座って水を眺めてるんだけど、いつも凄くキレイだなって思うんだ。光の反射できらめいたり、水がさざなみを立てたり」
「前から思ってたけど、君って文学的な表現をよくするね」
「そうかな?だってそう思うんだから仕方ないでしょ?」
私がそう言うと、ボーイフレンドは、苦笑した。
「悪いなんて言ってないよ」
「そ?それでね、水の色って、透明だけど、海とかは青いし、もっと浅瀬だと水色に見えるし、それが凄く不思議だなって思ったんだ。水は無色なはずなのに、色んな色彩を見せてくれるから、見てて飽きないなって」
「確かにね。光の反射でそう見えるんだけど、言われてみると不思議だし面白いね」
「そうでしょ?」
ボーイフレンドに肯定されたのが嬉しくて、思わず私は笑顔になる。
「でも、僕は君のほうが不思議で面白いけどね」
「え〜何それ?面白いとか失礼じゃない?」
私はその言葉に不満を覚える。
「褒め言葉だったんだけど」
ボーイフレンドも不満気な顔をする。
「そうだったの?」
私がボーイフレンドを見上げると、彼も同時に私を見下ろした。
「うん、そうだよ」
笑顔が少し眩しい。私はさっと視線をそらす。
「じゃあ、カフェに行こうか」
ボーイフレンドは気にすることなく、先へと進みだした。
私は少しだけ立ちすくんで噴水の水を眺める。
音を立てて吹き上がり、勢いよく落ちる水の流れ。
無色だけど、形作られた様々な造形を見ていると、何となく吸い込まれるように見てしまう。
水の持つ魅力に私はいつも囚われてしまう。
「行こうよ」
ボーイフレンドが戻ってきて、そっと私の手を取る。
ハッと我に返った私は頷く。
「そうだね」
また明日ゆっくり噴水を見に来ようかなって思いながら。
題 桜散る
桜の花びらがヒラヒラと私の眼の前に舞い降りてきた。
隣にいる彼氏が手のひらを差し出してその花びらをキャッチする。
「花びら、きれいだな」
そう言って差し出した彼氏の手のひらに指を差し出して、小さな淡いピンクの花びらをつまんだ。
「うん、お花見、来れてよかった」
私が彼氏を見上げて微笑む。
4月から違う高校に通っている私達。
新しい高校には同じ学校から通う友達が一人もいなくて、一人で何となく出遅れてた。
それでも、好きな英語学部に行きたかったから、英語の専攻の授業が沢山あって、嬉しかった。
それでも、寂しさもある。
いままで中学まで彼氏と女友だちと一緒に楽しく過ごしていたから。
全然違う環境の高校でストレスが溜まっているのか、疲れてしまう。
彼氏は、同じ中学の友達が沢山通っている高校だから楽しそうだ。同中の女の子も沢山彼氏の高校に進学しているから、そこも心配になってしまう。
だけど、毎日通話して、気遣ってくれる彼氏。
それで、私が元気がないのを知って、お花見に誘ってくれたんだ。
「ありがとう、凄く綺麗だし、気分転換になったよ」
私は笑顔で彼氏に笑いかける。
「うん」
彼氏も微笑んで私の頭に手を乗せた。
「もっと一緒にいられたらいいのにな」
ドキッ
彼氏のそんな言葉に、私はトキメキを感じる。
それと同時に嬉しさも沸いてきた。
「・・・そうだね、それでも、こうして会えるだけで嬉しいよ。また明日から頑張れそう」
私は心からの気持ちを彼氏に伝える。
「・・・良かった。でもな」
彼氏が何となく拗ねたような顔をする。
「ん?」
私は何だろうと聞き返す。
「同じ高校にカッコいい男がいたりしないか?」
「・・・ふふっ!」
私は、自分と同じことを考えている彼氏に思わず笑ってしまう。
「何で笑うんだよ」
彼氏は笑ってる私に軽く抗議した。
「ううんっ、大丈夫だよ、あなた以上のイケメンは高校にいないから、安心して」
私の言葉に、彼氏は、ホッとしたような笑みを見せた。
そんな彼氏に、私は彼氏の手を取って顔を見つめる。
「また、すぐデートしようね」
「そうだな」
私達は、そのまま見つめ合っていた。
ヒラヒラ
桜の花びらが視線の横をよぎる。
私は顔を上げて、風が吹き付け散っていく桜吹雪を見つめた。
まるで薄桃色の雪の中にいるようだ。
横に彼氏がいてくれるのが、たまらなく嬉しい。
その時、この手をずっとずっと繋いでいたいって、強く強く思ったんだ。
題 夢見る心
「サンタクロースはいるんだよ!」
私がそう言うと、友達2人がプッと吹き出した。
「まーたミナが変なこと言い出した」
「ねー、いないって言ってるのにね」
二人の笑い顔を見ながら、私は重ねて言う。
「サンタクロースはいるよ、だって、いつもプレゼントいつもくれるもん」
「だーかーらー、それは違うんだって何度も言ったじゃん」
しつこい私の言葉にイライラしたようにサユミが言う。
「そうだよ、強情だな。中学生にもなって恥ずかしくない?」
タエがさゆみに同調する。
「恥ずかしくないよ、全然」
私は真っ直ぐな視線で2人を見つめる。
「もういいよ、行こう」
2人は行ってしまう。この話題になると、いつも喧嘩になっちゃうなぁ。
でも・・・。でも、そうなんだもの。
私には妖精が見えるんだもの、小さい頃から。
だから、サンタクロースだっているんじゃないかなと思ってる。
妖精は、そのへんをいつもうろうろしてて、羽根が生えてたり、動物みたいな可愛らしい姿のもいるし、赤い帽子被ってるのもいる。
小さい頃はそれを話してたらお母さんに叱られてたから、今は言わないけど、不思議な存在は確かに実在するんだ。
妖精たちとは話せない。見えるだけで特に干渉もしてこない。
確か、サンタクロースは、妖精に手伝ってもらってプレゼントを作ってもらってるんだったよね?
絵本で見たことがある。
それなら、いてもおかしくない。実際にこの目で見たことはないけど、私は信じてる。
でも、もう友達にもサンタはいるって言わないほうがいいのかも。
サンタクロースも、妖精も、他の人には見えないから、いないも同然のものなんだよね。
私には日常に溶け込んでいるけど、他の人には見ることが出来ない。
まるで夢の世界のようだ。
私はずっとこの夢の世界で過ごしていよう。
いや、過ごしていたい。
不思議で、どこか美しさの中に怖さもある妖精の世界。
この世界に私は魅了され続けているんだ。