「イカロスが大空に飛び立った気持ち、わかるなぁ」
私が空を見上げながら言うと、隣で彼氏が不思議そうな声で問いかける。
「どうして?」
「だって、こんなに広い空の向こうに何があるか気になるよ、ずっとずっと空の果てに行ってみたくなる」
私は手を日光を遮るようにおでこにあてながら綺麗なコバルトブルーの果てしない空を見渡す。
「イカロスは墜落したけど?」
隣の彼氏の意地悪な返答にめげずに話す。
「それは、そうだけどさ、その気持ちは誰にも邪魔できないでしょ?人の想いは誰にも止められないし自由なんだよ」
私の言葉に彼氏は沈黙した。
あれ?怒っちゃったかな?
そう思っていると、不意にぎゅっと抱きしめられる。
「行っちゃだめだよ」
彼氏の低い声が耳元で響く。
私は彼氏を抱きしめ返した。
「当たり前でしょ、もー本気にして」
私は苦笑しながらポンポンと彼氏の頭を軽く撫でた。
「だって、君って掴まえてないとどっか行っちゃいそうで」
彼の言葉が少し不安げに聞こえる。
彼の頭越しに広い広い大空が見える。
ああ、どうして空のこの色は私を魅了してやまないんだろう。
私はしばらくその空の青さから目が離せないでいた。
チリリリリン
自転車のベルの音にハッと後ろを見ると幼馴染の彼の姿
自転車にまたがって私に笑いかけてた
「今帰り?」
「・・・うん」
二人でなんとなく並ぶ
でも中学に入ってからはほとんど話すことがなくなった私達
きまづい沈黙が続く
二人の住むマンションが近づいてくる
「・・・寒いよな」
ポツンと話す彼に、私は同意して頷いた
「今年一番の寒さってニュースでやってたよ」
「マジで?どうりで」
少しの沈黙の後、私はひやっと頬に冷たさを感じる
「・・・雪だよ!」
空から降り注ぐ白い塊に手をかざしてはしゃぐ私
彼と良く冬の寒い日にマンションの外を走り回った事を思い出していた
「子供みてー」
彼の苦笑に
「どーせっ」
フンッとすねてみせる私
そして二人で笑い合う
まるで昔に戻ったようだった
マンションのエントランスに着いた時、彼が照れくさそうに話した
「今度どっか遊びにいかない?映画でも」
「えっ?」
ドキッとする私
「あ、いや、あまり学校でも話さなくなったじゃん?久しぶりに話せたし、また游んだりしたいなって」
頭を掻きながら話す彼の言葉を聞いて、なぜが顔が赤くなるのを感じた
「い、いいけど?」
私の言葉に彼は嬉しそうに笑顔になった
「マジで?じゃあ、また映画の内容はラインするわ」
「あ、わかった・・・」
私は彼に返事をした後、二人でエレベーターに乗る
どうしてだろう
幼馴染の彼の隣がむずがゆく感じる
彼の笑顔を思い出すと、何だか胸騒ぎがする
私は自分の胸のざわつきに?マークを抱きながら彼とエレベーターを降りてバイバイした