「イカロスが大空に飛び立った気持ち、わかるなぁ」
私が空を見上げながら言うと、隣で彼氏が不思議そうな声で問いかける。
「どうして?」
「だって、こんなに広い空の向こうに何があるか気になるよ、ずっとずっと空の果てに行ってみたくなる」
私は手を日光を遮るようにおでこにあてながら綺麗なコバルトブルーの果てしない空を見渡す。
「イカロスは墜落したけど?」
隣の彼氏の意地悪な返答にめげずに話す。
「それは、そうだけどさ、その気持ちは誰にも邪魔できないでしょ?人の想いは誰にも止められないし自由なんだよ」
私の言葉に彼氏は沈黙した。
あれ?怒っちゃったかな?
そう思っていると、不意にぎゅっと抱きしめられる。
「行っちゃだめだよ」
彼氏の低い声が耳元で響く。
私は彼氏を抱きしめ返した。
「当たり前でしょ、もー本気にして」
私は苦笑しながらポンポンと彼氏の頭を軽く撫でた。
「だって、君って掴まえてないとどっか行っちゃいそうで」
彼の言葉が少し不安げに聞こえる。
彼の頭越しに広い広い大空が見える。
ああ、どうして空のこの色は私を魅了してやまないんだろう。
私はしばらくその空の青さから目が離せないでいた。
12/21/2023, 10:57:11 AM