kiliu yoa

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5/13/2024, 6:10:34 AM

気づかないで、お願い。

わたしは、あなたの母では無いことを。

わたしは、あなたを恨んでいることを。

わたしは、あなたが成長するたびに複雑な感情を懐くことを。


あなたとわたしの関係に、このまま疑問を懐かないで。

わたしは、あなたを心から大切に思い、

愛していながらも、恨んでいることを赦して。



お願い、このまま気が付かないで。

どうか、このまま、ずっと……子どものままでいて。






5/3/2024, 3:41:26 PM

わたしには、かつて名前が無かった。

あるのは、数字とラテン文字の羅列だけだった。

何故かというと、わたしの身分は奴隷より更に低いからだ。

わたしのような身分を、道具や武器、人形や傀儡という。

その言葉が示すとおり、わたしたちには主がいる。


今のわたしには、名前がある。

今は亡き主様が有するもの、全てを貰った。

名前に身分、富など……数え切れないほど頂いた。

あなた様が為せなかった、

全てをわたしが受け継ぎ、少しでも成すために。

あなた様の苦しみと悔しさまでも受け継ぎ、

あなた様が描いた、理想の世界を実現するために。


わたしは、あなた様と交わした約束を果たすべく、今日も努めて参ります。











4/30/2024, 2:32:19 PM

目は閉じ、口は弧を描く。

上品に微笑みながら、さり気なく気遣う。

時には甘い言葉を囁やき、時には励ましと労いの言葉を掛ける。

あなたは触れられる前に、その手からすり抜けてしまう。

あなたを欲してしまえば、そこには居なくなってしまう。


口の中で、甘く、蕩けて、無くなる。


そう、あなたは、まるで蜜のよう。


楽園という名の、あなたという名の、


鮮烈な、甘く、蕩ける、毒を知ってしまえば、


もう他のものでは、満たされない。





4/27/2024, 3:11:28 PM

生きる意味など、私には無い。

唯、生きたから、生きる。

唯、それだけ。





4/26/2024, 2:02:00 PM

「面を上げよ。」

威厳のある、低い男の声が響く。

その声は、深く……土下座をした、初老の男に向けられた。

初老の男は罪人のように手錠をしていたが、

その容姿、その所作から、高貴な身分であることは明確だった。

「私なら、どんな目に遭おうと構いません。

 あの方だけは……、あの方に連なる血筋の方々だけは……、

 処刑しないで下さい。

 どうか、どうか、お願い致します。」

初老の男は、膝を付き、手をハの字に置き、深く頭を下げた。


威厳のある男は、初老の男の行動が全く理解出来なかった。

彼が知っている、高貴な身分の人間は全く頭を下げたりなどしなかった。



だから、彼は初老の男の懇願を退けた。

そして、彼は初老の男の言う、『あの方』と『あの方の血筋に連なる方々』

を皆処刑した。


何故なら、彼にも……初老の男のように、

彼を信じ、仕え続けてくれる者たちが居たのだから。




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