太陽
太陽が登って、
そして沈む。
夜が明けて、
そしてまた夜がやってくる。
帰ったら君がおかえりと言って、
俺がただいま、と言う。
こんな事、当たり前でしかない
当たり前であり、日常であり。
そう思っていたのに、
現に今、ただいま。と言って返ってくる言葉はない。
君が居ない部屋なんて、ずっと夜みたいに暗くて。
今思えば、
君が出迎えてくれるのも、
君が朝起こしてくれるのも、
君が料理を作ってくれるのも、
ちっぽけなように思えてたことも、
全部全部、奇跡のようなものだったのかもしれない。
そうは思っても君は帰ってこない。
俺は、誰もいない暗い部屋にごめん、と零した。
でも、返ってくる言葉はもうなかった。
鐘の音
鐘の音が僕を起こす。
それが毎朝の習慣。
鐘の音が鳴り止む、
そうすると、君はいつも窓から顔を出す。
「リンッ」
鈴の音がする。
それを合図に挨拶をする。
「おはよう」
つまらないことでも
「つまらないことでも、地道にやって行けば、必ず成功するんだよ。お母さんは見てるからね」
8歳の時に母さんが言ってくれた言葉、母さんは覚えてるかな。
ずっと会いにこれなくてごめん。
今、俺はずっと夢だった教師になったよ。
子供たちは皆良い子でさ。
母さんが言ってくれた言葉がなかったら、今の俺はないよ。ありがとう。
それに、俺結婚したんだ。息子も産まれた。お義母さんもお義父さんも優しい人でさ、
俺毎日が幸せなんだ。
なのに、なんか涙が出てくるんだよ
母さんが死んでからもう何十年も経ってるのに
おかしいだろ?
ごめん、子供が呼んでる、また近々会いに来るよ
母さん。
目が覚めるまでに
目が覚めるまでに、君は居るだろうか?
眠るときは一緒でも、結局朝には君の姿はない。
いや、きっと今日もいない。
仕事なのか、
はたまた、違う男の方…
いや、それは考えたくない。
俺の何がダメなのか。
君の言うことは全てやってきたはずなのに。
俺に必要なのはなんなのか。
プライベートのことを聞く勇気、
行かないでと言えるワガママ精神、
その前に、告白できないような男には振り向かないか。
そんな事を考えていると、
さっき起きたはずなのに夕方から夜になる。
するとチャイムが鳴る。
鳴ると同時に俺の鼓動も跳ね上がった。
気分の高ぶりを抑えて起き上がると、宅配だった。
こんなの、俺がイヌみたいじゃないか
まぁイヌか。
宅配はそっちのけで俺はまたベッドに寝る。
今日はいつもより夢が見たい。
君がずっと隣にいる夢を。
病室
こんなに夜が冷たかったなんて、
こんなに夜が寂しかったなんて、
考えたこともなかった。
なんで早く気づけなかったんだろう。
君はとっても優しかった。
だから俺に心配を掛けたくなかった。
考えればわかる事、なんで早く気づかなかったんだろう
君にとって俺はなんだったのか?
君のことを当たり前だと思っていた、
居なくなるだなんて考えたくなかった。
いや、考えもしなかった。
俺は泣きながら、冷たい君を抱きしめた。
「愛してる」
そう言うと、いつものように耳元で
「愛してる。」
君の可愛らしい声で、
そう聞こえたのは気のせいだろうか。