結呑

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11/28/2024, 11:41:43 AM

【終わらせないで】


私はちょっと特殊な悪魔。
デジタル文章を住処とする、ナウな悪魔である。
悩みは豆腐メンタル。
心が傷つくのでSNSとかの文章には住めず、
ここでひっそりと暮らしている。
しかし最近ここでも心にくる事があり、
つい最近自衛策を用意した。
それは「話を強制終了させる能力」
使い時は多々。
例えばそう――
今のようにロクに読まずにスクロールされる、
そんな悲しみを味わいそうなときとか?
















































まだ読んでいるだと…!(喜)


9/11/2024, 12:53:05 PM

【カレンダー】


ある日出会った悪魔に貰った、カレンダー。

日付の枠内に出来事を入れると、本当になる。

悪魔は言っていた。

これは天使から奪った代物で、悪魔には使えない。

天使用だから、悪事にも利用できない。

だからカレンダーを与える代わりに、契約を結ばせることにしたのだと。

効果が実証できない内は信用出来ない。

そう言うと、試しに一度使わせてくれた。

目の前の悪魔が今死ぬように書いた。

分かったことは二つ。

一つは、効果が本物であること。

もう一つは、悪魔の命を奪っても、それは“悪事”ではないということだ。







9/10/2024, 1:25:05 PM

【喪失感】


彼の名はアダム。
神に創られた最初の人間であり、《楽園》の生活を絶賛謳歌中である。

そして私はアダムの世話係の精霊“トリシマール”。
アダムの世話をしつつ、アダムの《楽園》ルール違反を取り締まる。
《楽園》のルールは主に3つ。

1.“禁断の果実”を口にしない。

2.“罪”を犯さない。

3.“欲”を出さない。

――なのだが。

アダムはこのルールを破りまくっている。
禁断の果実は日常食だし、軽犯罪レベルなら割とする。
「《楽園》ってパチ屋みたいだな」とか言う。

にも関わらずアダムが罰せられないのには、こんな理由がある。


楽園管理省へ

パワハラとか言われるのが怖いから、人間には優しくしましょう。

                     神様より


この手紙が来てから、監視とは名ばかりとなった。

ルールは形骸化、まさに“楽園喪失”である。


程なくして何故かパチ屋が建った。
この後滅茶苦茶堕天した。










9/9/2024, 11:16:04 AM

【世界に一つだけ】


ウチは《世界に一つだけ屋》。
扱う品物は文字通り、世界に二つと無いまさに逸品。
一品だけにな。

今日はお客様が実物を見てからご購入を検討したいとのことで、久々の訪問販売だ。

いつもより手間はかかるが、お客様のためのサービスは惜しまない。
なんせお客様も世界に一人だけ、かけがえのない存在だからな!

今回のお客様はアメリカにご在住。
船旅になるが、他のお客様との兼ね合いもあり、いくつか国を経由する長旅だ。

中継の国に着くと、俺はまず飯屋へと向かった。
その土地の飯は良い話の種になるから、商売に必須だと俺は思う。
いつかこの国で本腰入れて商売するかもだし、旅の噺にしてもいいわな。
何より、腹が減ってはなんとやらだ。

「いらっしゃい!好きな席に座りな!」
店に入ると、活気の良い歓迎を受けた。こんな気持ちの良い接客を見習うべきだな――
なんて職業病か、と考えていると、聞き捨てならない会話が耳に入ってきた。

「アメリカ北部ついには奴隷を解放」


今話題のアメリカ南北戦争。
今回の旅の最終目標だが――

なんてこった。それじゃあ今回の商談はチャラじゃないか。

ゴタゴタに巻き込まれるのだけはゴメンだ。
俺の売る奴隷が《世界に一つだけ》の大事な命であるように、俺の命も《世界で一つだけ》な尊い命なのだから。

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※思想的な意図はございません
※悪いやつを書きたかっただけなんです

9/9/2024, 9:16:07 AM

【胸の鼓動】


あるところに、不死の男がいた。
心臓を突かれても、毒を盛られても、海に沈められても、男は必ず生還した。

彼の長い人生で培われた頭脳や経験は何物にも代えがたく、歴史研究家や哲学者をはじめ、多くの業界人が彼と親交を深めている。
彼と関わった人は皆、口を揃えこう語る。

彼はなんでも知っている。

彼に怖いものはない。

話は変わるが、彼は“不死”であって“不老”ではない。
彼にとって唯一不明であるのは《老死の可能性》であり、彼は老いを恐れていた。

彼が老化に危機感を抱き始めたのは、最近のことではない。
彼は生まれたときから周りと同じように成長し、周りと同じように老いを経験してきた。
百年前の彼は、どうやら老死だけは避けられないのだと、そう思っていた。

しかし、現実は異なる。
どれだけ歳をとっても、彼は亡くならなかった。
“不死”は“不死”だったのである。
繰り返すが、彼にとって唯一不明なのが《老死の可能性》であり、彼は老化を恐れている。
身体だけが歳を重ね、年々自由が効かなくなっている中で、老死出来るのかだけが分からない。
死ねないまま身体だけが死んでいくのが、彼には堪らなく恐ろしい。
今も続く胸の鼓動を、止めたくて仕方がない。

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