【バイバイ】
とある大企業の面接にて
「私にこのペンを売ってください」
「あなた口臭いですね」
「は?」
「よく見たら歯も黄ばんでますよね」
「いや」
「それによく見なくてもハゲ」
「」
「その質問を恥ずかしげもなく言える精神も逆に見習いたい」
「……」
「恋人できたことあります?」
「もうあなたは不採用です、お引き取りください」
「よかった、これでバイバイ成立ですね。」
「………」
「…………」
「……………どういうことですか?」
普通に落ちた。
【旅の途中】
かつて勇者は、魔王討伐の旅を故郷である
この村から始めた。
故にこの村は冒険者の聖地であり、わざわざこの村から冒険を始めようとする者も多い。
村は新進気鋭のルーキー達やそれを狙う商人等で
常に活気があり、今や村というより――街のような発展具合である。
―――さて、そんな街の外れ住む私は、この街が村だった頃の村長である。
この家は軽い丘の上にあり、村の様子がよくわかるのが当初はとても気に入っていたのである。
昔は街のように元気も体力も漲っていたが、
今では村のように、静かに、穏やかに暮らしている。
皮肉なもので、街が盛り上がればそれだけ、私は老い朽ちているような気がするのだ。
村長としては村の繁栄を喜ぶべきなのだが…まったく自分が惨めに思えてきて仕方がない。
そして、この年になってそんなことに悶々としているのも、またみっともないのだと思う。
そんなある日、街の行事に前村長として出席することになった。
最近は身体の勝手がきかなくなっていたこともあり、
まともに街に出向くのは数年ぶりである。
どこを見ても目に映るのは、活気ある若者たちの姿。
まるでひとりひとりが、かつての勇者のように、眩しくそこに存在している。
しかし一方で、街は意外と村の面影が見えた。
丘から見れば建物は高く、夜でも明るく、特に静かな彼の家では騒ぎ声まで届いたものだが、
道や区画は昔のままに、武器屋も、宿屋も、看板だけは変わっていない。
気づいてしまった。
変わっていたのは、「村と私」ではなく、「私」だけだだったのだ。
村は街となっても、旅を支え続けていた。
ただ私が気概を失い、人生の旅から降りただけなのだ。
街は、こんな私の旅も支えてくれるだろうか。
願わくば私も、旅の途中から………
【終わらせないで】
私はちょっと特殊な悪魔。
デジタル文章を住処とする、ナウな悪魔である。
悩みは豆腐メンタル。
心が傷つくのでSNSとかの文章には住めず、
ここでひっそりと暮らしている。
しかし最近ここでも心にくる事があり、
つい最近自衛策を用意した。
それは「話を強制終了させる能力」
使い時は多々。
例えばそう――
今のようにロクに読まずにスクロールされる、
そんな悲しみを味わいそうなときとか?
まだ読んでいるだと…!(喜)
【カレンダー】
ある日出会った悪魔に貰った、カレンダー。
日付の枠内に出来事を入れると、本当になる。
悪魔は言っていた。
これは天使から奪った代物で、悪魔には使えない。
天使用だから、悪事にも利用できない。
だからカレンダーを与える代わりに、契約を結ばせることにしたのだと。
効果が実証できない内は信用出来ない。
そう言うと、試しに一度使わせてくれた。
目の前の悪魔が今死ぬように書いた。
分かったことは二つ。
一つは、効果が本物であること。
もう一つは、悪魔の命を奪っても、それは“悪事”ではないということだ。
【喪失感】
彼の名はアダム。
神に創られた最初の人間であり、《楽園》の生活を絶賛謳歌中である。
そして私はアダムの世話係の精霊“トリシマール”。
アダムの世話をしつつ、アダムの《楽園》ルール違反を取り締まる。
《楽園》のルールは主に3つ。
1.“禁断の果実”を口にしない。
2.“罪”を犯さない。
3.“欲”を出さない。
――なのだが。
アダムはこのルールを破りまくっている。
禁断の果実は日常食だし、軽犯罪レベルなら割とする。
「《楽園》ってパチ屋みたいだな」とか言う。
にも関わらずアダムが罰せられないのには、こんな理由がある。
楽園管理省へ
パワハラとか言われるのが怖いから、人間には優しくしましょう。
神様より
この手紙が来てから、監視とは名ばかりとなった。
ルールは形骸化、まさに“楽園喪失”である。
程なくして何故かパチ屋が建った。
この後滅茶苦茶堕天した。