新年
雲、冷気、蜜柑
なんでかな
外に出なきゃって
子供じゃないんだから
どこに行こう
明日も休みだったらな
でも
友達に会いたいな
もう会えないのが
辛いな
良いお年を
「カウントダウン始まるよ!」
君は空を指し言った。
空中では無数のドローンが光り、数字を形作っていた。
「僕には何のカウントダウンなのか分からないな。毎日今日が終わっていると言うのに」
僕は無意識にドローンを数えていた。
「じゃあカレンダーなんていらないね」
君はデジタルの数字を見ながら言った。
「そうかな」
君に聞こえないよう小さく呟いた。
カウントダウンは15分前から開始されていた。
「飛行車は通行禁止なのかな」
僕はドローンより上でフワフワ浮かんでいる飛行物体に目をやった。
「そうでも無いみたい。高度制限だけみたい」
沈黙。
イヤホンからイベント司会者の声が聞こえてきた。
耳からではなく頭の上から聞こえてきている様な感覚だ。
日付が変わる10分前。
「良いお年を!」という声と共に周りの雑音が聞こえ始めた。
「良いお年を!」
君が僕を見て言う。
綺麗だった。
「よい、お年を」
君の顔は街明かりとドローンで艶やかに照らされていた。
ps:
正月にそんな夢を見た。
1年を振り返る
警報がなる
猫が走る
足が竦む
何かが倒れる音
死ぬんだ
家族は大丈夫か
逃げなきゃ
楽しかったな
伝えなきゃ
上手く立てない
急げ
怖い
這い蹲る
震源地は
津波が来る
猫を捕まえなきゃ
守らないと
助けて
深呼吸
鼓動
汗
動揺
壁
手
床
足
階段
叫ぶ
声
安堵
初めて恐怖で泣いたあの日
ps:
楽しかった
またいつか
みかん
こたつが恋しくなる頃
それもまた求めてしまう
食べ終わったものをプカプカしてみたり
あ、無くなりそう
外は暗く白く寒い
「まだ食べたいな」
呟いた時には玄関の扉をガラガラ
こたつみかんが待っているから
1時間後の世界は
ps:
ころころ。
ころころ。
こたつのうえでみかんを左右に転がしていた。
ごろごろ。
ごろごろ。
こたつ越しの膝のうえで寝てるねこを撫でていた。
ねことみかんを交互に見た。
しばらくは何もできないな。
こたつの上には途中で消してしまった、
吸殻の入った灰皿。
手をつけていないみかんたち。
右手をこたつの中に入れた。
たちまち心地の良さに包まれた。
左手は撫でるのをやめ、
明日へ行くための夢を見ていた。
閑散とした街
三人の音楽隊が道を行く
走る、駆ける、滑る、駆ける、止まる
それでも音を作り続ける
何もしなくても
明日はやってくるけど
僕たちは待ちきれなかった
今年もよろしく