良いお年を
「カウントダウン始まるよ!」
君は空を指し言った。
空中では無数のドローンが光り、数字を形作っていた。
「僕には何のカウントダウンなのか分からないな。毎日今日が終わっていると言うのに」
僕は無意識にドローンを数えていた。
「じゃあカレンダーなんていらないね」
君はデジタルの数字を見ながら言った。
「そうかな」
君に聞こえないよう小さく呟いた。
カウントダウンは15分前から開始されていた。
「飛行車は通行禁止なのかな」
僕はドローンより上でフワフワ浮かんでいる飛行物体に目をやった。
「そうでも無いみたい。高度制限だけみたい」
沈黙。
イヤホンからイベント司会者の声が聞こえてきた。
耳からではなく頭の上から聞こえてきている様な感覚だ。
日付が変わる10分前。
「良いお年を!」という声と共に周りの雑音が聞こえ始めた。
「良いお年を!」
君が僕を見て言う。
綺麗だった。
「よい、お年を」
君の顔は街明かりとドローンで艶やかに照らされていた。
ps:
正月にそんな夢を見た。
12/31/2024, 12:21:51 PM