この場所で
胸のつかえはそのままなのに
なぜか笑える気がしてる
あいかわらず濁っているのに
飲み干してしまえそうだ
錯覚でも歩いて行けるだろうか
とりあえず
やさしい無関心さの充満するこの
喫茶店で待ち合わせる
花束
大
花
野
君
く
れ
し
野
の
花
束
よ
季語 大花野(おおはなの)
花野の傍題(仲間の季語)
秋の季語 秋の草花が一面に咲き乱れる広々とした野原。
誰もがみんな
子
の
毟
る
や
ん
ま
の
首
に
み
な
泣
く
野
季語 やんま
蜻蛉(とんぼ)の傍題(仲間の季語)
秋の季語
毟る は むしる と読む
スマイル
チャップリンはこう言う
「笑って 涙溢れそうな時こそ
頑張るんだよ」
って
泣いちゃえば良いぢゃん
泣いちゃえよ、
チャップリン。
涙のあんたも素敵だぜ
時計の針
「ひとごろし!」
辺りがざわっ、とした。
人で溢れ返る、午後のフロアに、
響き渡る少女の
いや、それよりもっと幼い女の子の声。
何歳かは自分にはわからないが。
その声が自分に向けられたものと
わかるのに、少々時間がかかった。
女の子の横には両親と思われる男女がおり、声の主は足を踏ん張り、唖然としている
母親のスカートを握りしめて立っていた。
「え、と、君は、なんでそう思うのかな?」
目線が合わないので屈(かが)む。
「そのせいふくのひとは、ひとごろしだってお兄ちゃんが!」
そう、制服の人、自分は警官だ。今日はショッピングモールのパトロールに来ている。
「お兄ちゃん?」
「そう、お兄ちゃんは凄いんだから!みんなを助けるために、爆弾とかも作れるの!」
爆弾とは穏やかでは無い。
ようやく事態を把握したらしい母親が、
「カオリ、お兄ちゃんって、隣の…?」
「そう、右手に、星の印の火傷のあるお兄ちゃん!人を助けた時に、神様になったお兄ちゃんの弟がくれたって印!」
…何度時計の針が回ろうと、
俺はお前を許さない。
俺はまたお前の前に現れて、弟の仇を…
脳裏に蘇る、奴の声。
「先輩、そのお兄ちゃんて、まさか…」
自分は出来るだけ声を柔らかくして言った。
「カオリちゃん、そのお兄ちゃんの名前、もしかして〇〇、とか、××かなぁ?」
奴がよく使う偽名を言った。
カオリちゃんの顔がパッと明るくなる。
「そう、〇〇お兄ちゃん!…ひとごろし、
じゃなくて、お友達?」
カオリちゃんが首を傾げる。
「そう、お友達だよ、
ずいぶんと昔からのね」
すっと立ち上がり、後輩と目で会話し、
無線で連絡を入れた。
連続爆弾魔、〇〇の潜伏先がわかったと。
1000年先も
「1000年先の未来も、私たちは生き残る。」
「私たちは、未来の子ども。
大切なのは、共有、共同の精神。」
毎朝の経典の復唱。
私たちは、ある教団に属している。
ここでは、戦争や災害が起ころうとも、
生き残ることができるように、
サバイバル術の習得や、備蓄に励む。
そして、特徴的なのは、
「個」は存在しないことだ。
家族で入信した人も、
家族の単位は解体され、
ばらばらで生活する。
個人の持ち物はなく、
服や食器、寝る所なども共有、共同。
そうすることで、
個人の力が最大限発揮され、
終末の日さえ乗り越えられる。
と、思っていた。本気で。
「脱走者だ!捕まえろ!」
「東の崖だ!追い詰めろ!」
いやだ。いやだ。いやだ。
もうこんなところはいやだ。
俺は戻るんだ。1000年先の未来より今だ。
今が大事なんだ。共有、共同?
そんなものどうだっていい、飛べーーー。
その日、東の崖から1人の男が飛んだ。
その後の彼の行方は、杳(よう)として知れない。