ことり、

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1000年先も


「1000年先の未来も、私たちは生き残る。」
「私たちは、未来の子ども。
大切なのは、共有、共同の精神。」
毎朝の経典の復唱。

私たちは、ある教団に属している。
ここでは、戦争や災害が起ころうとも、
生き残ることができるように、
サバイバル術の習得や、備蓄に励む。
そして、特徴的なのは、
「個」は存在しないことだ。

家族で入信した人も、
家族の単位は解体され、
ばらばらで生活する。
個人の持ち物はなく、
服や食器、寝る所なども共有、共同。
そうすることで、
個人の力が最大限発揮され、
終末の日さえ乗り越えられる。

と、思っていた。本気で。

「脱走者だ!捕まえろ!」
「東の崖だ!追い詰めろ!」

いやだ。いやだ。いやだ。
もうこんなところはいやだ。
俺は戻るんだ。1000年先の未来より今だ。
今が大事なんだ。共有、共同?
そんなものどうだっていい、飛べーーー。

その日、東の崖から1人の男が飛んだ。
その後の彼の行方は、杳(よう)として知れない。

2/4/2024, 12:19:08 AM