通り雨
ふっとあの人が香った
昔から鼻がいい
お母さんの胃が弱い時の匂いも
お父さんのパチンコ屋さん帰りも当てた
あの人はいつもこんな匂いがした
安心する匂い
クッキーの入ってた空き缶の懐かしさ
新しい本の冒険の匂い
鏡台の引き出しのわくわく
バスの中なのに泣きそうになる
きっと運転手さんは分かってる
通り雨の窓に顔を寄せる
こうしたらわからないかもと願いながら
杖をついたおじさんに気づく
次のバス停で降りるから
もう少しだけ泣かせてください
形の無い物
大好きだった美容師さん。(女性)
万事控えめで、それでいて技術は確かで、
毎回いい感じの髪型に仕上げてくれる。
趣味も合って話が弾む。完璧。
ある時、話し方が少し違った。雰囲気も。
堂々として自信ありげ。
思わず、
「なんか今日、いつもと違いますね。
何というか、
輪郭がしっかりしているというか…」
うーんさすが、私、詩人?
美容師さん、パッと表情が変わった。
「えーっ、分かります⁈実は私…」
…宗教じみた
何かにハマっている話をされた。
それから少しだけ距離ができてしまった。
うーん、形の無い物、
形を決めるのは自分だけにしようぜ。
他人には触らせまいぞ。
そう思わされた出来事。
大事にしたい
時に冷たくした。
時にそっけなく、
無視したり、
嘲笑ったり。
時に痛めつけ飢えさせ1人閉じ込めて
それを楽しんだ。
私は最低な人間だ。
世界にたった1人しかいない私に
そんなことをするなんて。
できるなんて。
私は私を大事にしたい
花畑
俳句では、
花畠(はなばたけ) 三秋
【子季語】
花畑/花壇/花園/花圃
【解説】
「お花畑」と「お」がつくと、一面の高山植物群を意味し夏の季語となる。花畠は秋の花々を咲かせたところ。(きごさいより)
別のサイトには、
花野、花園、花圃、花壇も秋の季語
とのこと
花畑 と お花畑 が違うとか
初見殺し…!
ちなみに三秋とは、8月8日頃(立秋)から11月6日頃(立冬の前日)までの3ヶ月間のこと 初秋・仲秋・晩秋
空が泣く
振動を肌で感じる
立ち上がる水のにおい
パタ、パタ、パタ、と小人たちの足音
ラジオに混ざるノイズ
洗濯物を取りこむ女
熱帯の海で生まれた
雷雲が押し合いへし合いして
極東のこの地にやってきた
木々は緑を増し
人間は青くなる
本当は
浴びたい
雷雲のパワーを
風を
雨を
この身体いっぱいに
…流石にそんなこと出来はしなくて
安全な鉄筋コンクリートのなかで
夢想しながら
ひっそり
詩を書いている