柔らかい雨
先ほどから、陽だまりで雨に打たれている。
年季の入ったベンチで、齧り掛けのパンも
そのままに。
周りの人はそんな俺も特に気には
していない。
柔らかい雨…慈雨とか、恵みの雨とか、
英語ではwelcome rainとか、blessed rainって言うんだろうな。故郷では、晴れてるから
狐の嫁入りとか何とか。
いつまでも、この優しさに打たれていたい。
どこにも、帰りたくない。
俺の心が、泣いているのだ。
それを天が、癒やしてくれているのだ。
こんなとき、フィクションでは、
狐の子供が、蕗の傘でも
差し出してくれるんだろうな。
そこから冒険が始まって…
「おじさんっ、傘、あげるからさしてっ」
目線を上げると、そこには本当に狐の子供がー
ではなく、黄色いカッパを着て、フードが
ちょうど垂れ耳になって、
緑の傘をさした子供が。
「え、あの、いや、イイヨ、君が、僕が、
風邪引くよ」
何言ってるんだか。
「いいの、ぼく、カッパ着てるし、この傘、
振り回して穴空いたから、
今度買い替えるってママが
言ってたやつだから、おじさんにあげる」
と、を傘をぐいぐい押しつけてくる。
「じゃあねっ」
「ああ、あー…」
降り続く雨。
おじさんに、緑の子供用傘は、
きついなあ…。
一筋の光
一筋の光
りりり
遮り
りりり
雁
りりり
黙(だんま)り
りりり
祭り
りりり
絡繰(からく)り
りりり
護(まも)り
りりり
鏡の中の自分
鏡の中の自分は
泣いてる?
笑ってる?
怒ってる?
喜んでる?
それとも
そのどれでもなく
無表情 無感動 = 無価値?
あの日
無意識に感情を押し殺すことを始めた
あの日から
そのことに気づいた日
感情を表現出来るようになった今
改めて
鏡には何が映るのだろう
哀愁をそそる
哀れだなあと思う
とても高くて
頑丈で
乗り越えられない壁
私を拒む崖
のように思っていたのに
今は
老いさらばえた 唯の人
時の流れは残酷で平等だ
いつか私もそちら側に行くのだろう
眠りにつく前に
眠りにつく前に、私は音楽を聴く。
ご近所に配慮して、ヘッドホンで。
最近は、ゴンチチ。
代表曲の「放課後の音楽室」は
もちろん素敵。
音と音の余韻、空気感を感じるのが
聞きどころではないかと思う。
それと同じくらい素晴らしいと思うのが、
「My Favorite Things」のカバーアレンジ。
アジアの楽器?まで使って、かなり個性的。
これを聴いたらテンションが上がって逆に
眠れない?
永遠に
私の好きなバンドのファンは、
自分に、ペンネームのような
「ライブネーム」をつけて、
ファン同士の交流時にはその名で呼び合う
といった習慣があった。今でもあるのかな?
その昔、ライブ会場で見たことのない
そのバンドメンバーの写真入りTシャツを着た子たちがいて、話しかけた。
自分たちで作ったオリジナルTシャツだと
いう。版権…という気もしたが、
気合いは十分な子たちだ。
言葉がおぼつかない。
アジア圏から来たという。凄い。
お名前を聞くと、
「私のライブネームは、えいえんです!」
えいえん…永遠か。
とわ、とかの方が可愛いよ、
という語学力が私には無い。
その子とはそこから友情が永遠に続いている
のだったら良かったが、
手紙の一往復くらいで終わってしまった。
手紙、というのも時代だな。