アリス!
はっと体を起こした。
膝から小説が滑り落ちた。
私はソファで小説を読みながら
眠ってしまったらしい。
アリス 早く、夕食の支度をして頂戴
全くこの子は…
ぶつぶつと小言が続くのを遮るように、
私はエプロンを付けた。
私はアリス。この家の娘だ。
疎まれている方の。 
野菜を際限なく刻みながら、手に目をやる。カサカサとして艶のない肌。
姉のロリーナ、妹のエディスは
こんな家事はしたことがない。
しなくて良い。私だけ…。
…ッ。一瞬手を切ったと思った。
爪を刃がを掠っただけだ。
ただそれだけなのに。涙が意図せず流れた。
何?怪我したの?
手当を
そんな声を背中に受けながら、
台所を飛び出した。広い屋敷を走り抜け、
ある部屋に入る。扉が静かに閉まった。
顔を上げてぎょっとした。
亡霊のような女の顔が私を見ていた。
暖炉の上のマントルピースの鏡だ。
私こんな酷い顔をしているの…。
…アリス。アーリス。
私を呼ぶ優しい声。
アリース。こちらへおいで。
私は鏡へ手を伸ばした。
I'm proud of you.
アメリカ映画で、自分の息子を
お母さんが褒める時なんかに
よく聞くセリフ。
お母さんはあなたを誇りに思うわ。
もっと軽く、
あなたは良くやったわよ。
みたいなニュアンスらしいけど。
言われてみたいな。
肩を抱きながら、とか
目をしっかり見てくれて。
私は言われない代わりに、
世の中のお母さんへ
よろしくお願いします!
夜の海
沈みたい
何も考えず
深く深く
そして海の底で
二人が出会ったなら
もう一度恋しよう
・心の健康
失って気づく
君は僕の心の安定剤
ビタミン
ミネラル
その他もろもろ
とにかく欠かせないもの
何がいけなかったの?
僕のせいだとして
君のせいだとして
永遠に解けない知恵の輪
・自転車に乗って
自転車に乗って
あの坂を越えたら
何かが変わる
そう信じたあの頃
大きくなって
坂を越えて
思う
こんな小さくて狭い世界に居たのかと
そして
自分は変われたのかと…
麦わら帽子
麦わら帽子に限らず、
帽子の紐をカミカミする子供だった。
自分の汗の味とゴム紐のゴムの味わい。
混じり合った夏の味?
君の奏でる音楽
恋に落ちた。高2の夏、
とあるミュージシャン。
その方のお言葉。
「このバンドも好き、
このミュージシャンも好き、じゃなく、
オレへの絶対的な愛が欲しいんだ…」
その時のCDアルバムを今でもよく聞く、
と言いたいところだが、
実は聞けない。聞かないではなく聞けない。
その時の私の正負の感情、情熱、悲しみ、
苦しみ、全てがパッケージされているので
聞くのが苦しいのです。