ことり、

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7/1/2023, 12:33:07 PM

窓越しに見えるのは、月から見た地球の姿。

ここは月面の、廃棄寸前の街。
月面開発が行われたのは、とうの昔の話。

今は金が無く、地球にも帰れず、
どこにも行く宛のない訳あり者たちの街。

かつては俺も、腕ききの科学者だった。
今じゃ安酒で酔い潰れる毎日。

安酒では悪夢ばかりで、
まともな夢も見れない。

夢…。科学の最先端の月で、
金も、地位も名誉も全て手に入る、
夢。

全てを捨ててきた地球。
今じゃ逆に俺を見下ろしてる。

夢。

今日街角のタロット占い師をひやかしたら、
良いカードを引いた。
今夜は少しでもまともな夢が見られるといいな…。

6/30/2023, 2:51:36 PM

「私にとって 
 運命の赤い糸で結ばれた相手は 
 ただ1人 あなただけ」

娘の時分に読んだ、ロマンス小説ばりの
そんなセリフを言えるのは、
現実に何人いるだろう。

結婚した人の六割は、
離婚を考えたことがあるという。
私も例に漏れずその何割かの1人。

ちくちくとしたモラハラ風嫌味。
家事も育児も、私がギリギリ耐えれるだけの負荷をかけてくる。

絶対離婚してやる!という決定打は無い。

今、私の赤い糸の片方は、
ふらふらと風に吹かれている。

誰がそれを捕まえてくれるのか、なんて、
白馬の王子様を私は、
こんなオバサンになっても、
夢見ているらしい。

今宵は昔読んだ小説でも引っ張り出して、 ハラハラドキドキしてみるか。
夫とはとうに別寝室。
誰に気兼ねするでもなく。

「運命の赤い糸切れてる時間」を楽しもう。

6/29/2023, 12:15:18 PM

その向こうには何があるのか。
消えかけの虹。
校区境の踏切。
薄暗い鳥居。
そして入道雲。

自転車をがしゃがしゃ漕ぐ。
朝、入道雲はもう空にある。
見下ろされながら時間と戦う。

横断歩道で待ちながら一息ついていると、
青信号を待ちきれない生徒たちが
次々と追い抜いていく。
慌てて真似する。

やっと着いた自転車置き場から飛び出す。
校門をくぐる。
帰宅部の私の自主練のような、
毎朝の儀式。

その向こうに何があるのか。
その旅はいつも途中で終わり。

始業の鐘が雲の峰に響く。

6/28/2023, 12:11:50 PM

夏 夏は夜 
夜、花火。

記憶の中の花火を見ている自分は、
決して独りではない。

友人と、恋人と、家族と。

友人だった人が、恋人となり、家族となる。

それをずっと花火は見ていた。

一瞬で花開き、散る花火は
連綿と続くそれを見ていた。

一瞬と 永遠と

夏はその繰り返し。

6/27/2023, 12:00:53 PM

ここではないどこか。
ココデハナイドコカ。
どこでもないここか?
どこでもあるいまか。

かえりたい
かえりたい
どこかへ
かえりたい

春 北国に帰る渡り鳥
秋 産卵のため川を遡上する鮭

彼らを見るたび強烈に思う

かえりたい
どこへ?

渦の中心
始まりの螺旋

銀河の
排水溝の
その向こう

はじまりのばしょへ
はじまって、おわる ばしょへ。

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