古井戸の底

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11/30/2025, 1:39:10 PM

執筆予定

【君と紡ぐ物語】

11/25/2025, 2:05:12 PM

職場と駅を繋ぐ道にはイチョウの葉の残骸が散らばり、踏み潰された銀杏の独特な臭いが時折鼻を掠める。
この落ち葉が綺麗さっぱりなくなる頃にはきっと、親友は愛する彼と共にこの地を旅立っている。

11月に控えた分、12月は立て続けに男と会う予定を入れていた彩子だったが、7日についてはキャンセルの選択肢すら浮かんでいた。LINEのやり取りが激減した藤堂とこれ以上デートを重ねることに、何の価値も見い出せない。彼が語れそうな分野の話題を振って、適当に共感や浅い質問をするだけ。向こうもつまらなさを感じているに違いない。
自分から指定した日付だったから、それを反故にするのは余計に気が引けた。彼女の送別会が入ったことにするしか妥当な理由が見つからなかった。
幸い、藤堂には親友の存在を話してはいる。これで代替案を提示せずにフェードアウトすれば、よほどの鈍感でない限り察するだろう。

彩子は親友にLINEを送った。
『お疲れ様です』
『ちょっと相談がありましてね、電話してもよろしくて?』
1時間ほど経って返信が来た。
『すまん、ライブ行ったら風邪ひいたので寝る』
『明日に延期させてくれ』
土下座するキャラクターのスタンプがついてきた。
『大丈夫、明日もダメそうなら言ってくれ』

彼女とやり取りする時、彩子はどれだけ時間が空いても悩むことはない。いつかは返してくれる、電話に応じてくれるという確信があるから。
そして八木橋の文面にも、同じような気持ちを微かに抱き始めていた。同時進行していないとはいえ、彼はとても律儀だ。残業が常となっている中でも、出勤時間・昼休憩・退勤後のどこかで返事が来るし、言葉少なでも会話を続けようとしている。
よくよく考えれば、彼から誘いが来るまで一週間ほどLINEが途絶えていたのだから、多少間があっても構わないのだ。また話が途切れて、こちらから突然話を振り直したとしても、きっと彼は何らかの言葉を返してくれるはず。その安定感が心地よく感じられた。


【落ち葉の道】彩子11

11/13/2025, 3:29:30 PM

執筆中

【祈りの果て】

10/30/2025, 10:54:41 PM

執筆中

【そして、】

10/10/2025, 2:51:08 AM

「彼の転職が決まったら、結婚して東京に行くかもしれない」
小学生以来の親友にそう言われた時、彩子は東尋坊の崖っぷちに立たされた心地がした。

彩子の恋愛経験は一度きりだった。新卒で入った会社の同期と付き合ったが、彼の怠惰に愛想を尽かし、半年足らずで別れた。さらには身体を壊し、会社を辞めて1年ほど引きこもった。それ以降、同年代の男性と関わることは一切なく三十路が見えてきた。
現在の彩子の職場は中年だらけ。当然出会いはない。彩子もそれでいいと思っていた。親友と月一会って遊べば、孤独を十分に癒せたから。
しかし、今の彩子は自分でもおかしいと思うくらいに焦っていた。結婚まで行かなくてもいいから、せめてもう一度恋をしたい。


親友に薦めてもらったマッチングアプリを入れて、彩子は右も左も分からぬまま、とりあえずプロフィールが誠実そうな人を選んでやり取りを始めた。なるべく話に共感を示していたら、意外にも数日で初対面の約束が決まった。場所は彼にお任せしてしまった。

秋らしい色合いの服を箪笥から引っ張り出して並べる。服を選ぶのにここまで悩むことも今までなかった。きっと彼もそれなりにオシャレしてくるはずだ。自分は見合う格好をできているだろうか。
期待と不安で鼓動が速まる。彩子はメイクを終えると、ひとつ深呼吸して、鏡の前で笑ってみた。

【秋恋】彩子1

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